有馬温泉の金泉は、やはり天下の名湯だった

上大坊外観イラスト 温泉

有馬温泉は神戸からのアクセスも良く、電車や車で30~40分程度の距離です。古くから有馬温泉は、草津温泉下呂温泉とともに「天下の三名泉」と言われ、宿泊から日帰りまで気軽に訪れることができる「関西の奥座敷」として知られています。

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歴史

有馬温泉の歴史は古く、大和飛鳥時代から多くの人が訪れています。中でも豊臣秀吉の有馬温泉好きは有名で、本能寺の変のあと天下を掌握する過程で9回も有馬温泉を訪れています。戦いによる疲労を癒やすとともに、茶会を催すなど有馬温泉の地を愛していました。1594年(慶長元年)には大規模な別荘「湯山御殿」を建設しましたが、あいにく2年後に発生した「慶長伏見地震」によって湯山御殿は全壊し、有馬温泉の湯屋や民家も大きな痛手を負いました。また、湧出する源泉の温度が上昇し、温泉利用ができなくなったため、秀吉は直ちに復旧と大規模な改修工事を行い、有馬温泉を復興させました。こうして400年後の現在も、我々は有馬温泉を楽しむことができています。

金の湯に入浴した歴史上の著名人
有馬温泉金泉に入浴した歴史上の著名人
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温泉湧出の原理

近畿地方には活火山がないにもかかわらず有馬に温泉が湧く原因は、有馬の地下に若い地殻プレートが沈み込んでおり、高温流体が噴出する断層などのポイントがあるためとされています。非火山性の温泉のなかでも有馬温泉は特異な存在で、ひとつは非常に高温であることと、もうひとつは成分が特徴的なことです。有馬温泉は最高温度が98℃もあり、塩分濃度が海水よりも高く、炭酸ガスをたくさん含んでいます。さらに鉄分が多いため湧出時は無色透明の温泉は、空気に触れて鉄分が酸化し赤褐色に変色します。

日本列島周辺の地殻プレート フィリピン海プレートが有馬の下に入り込む
日本列島付近の地殻プレート フィリピン海プレートが有馬の下に入り込む
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泉質

有馬温泉は「日本三大名泉」といわれ、療養泉として指定される9つの主成分(単純性温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、硫黄泉、 酸性泉、放射能泉)のうち、 硫黄泉と酸性泉を除く7つの成分が含まれる世界的にも珍しい温泉です。

有馬温泉の泉質は大きく「金泉」と「銀泉」の2種類に分類されます。金泉は鉄分を多く含む赤褐色の塩化物泉で、保温・保湿効果が高く肌に良いとされています。一方、銀泉は無色透明の炭酸泉やラジウム泉で、リフレッシュ効果が期待できる温泉です。

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金泉 銀泉 足湯

有馬温泉には「日帰り利用」ができる外湯として「金の湯」と「銀の湯」が整備されています。

金の湯」では、鉄とナトリウムを含む塩化物強塩高温泉で、濃い濁りの「金泉」が楽しめます。建物外にある「太閤の足湯」は無料で利用可能です。源泉温度は81℃、ph6.66です。

金の湯外観
立ち寄り湯「金の湯」外観

金の湯の外に整備されている「太閤の足湯」です。訪れた際は若干温度が低く感じられました。

金の湯、足湯
金の湯に付帯する足湯

銀の湯」は、温泉街のはずれの寺町界隈にあります。炭酸泉源の炭酸泉放射能泉を混合して使用しています。有馬温泉といえば、濃い赤褐色で塩辛い金泉が有名なため、無色透明な銀泉は個性が薄く地味な存在です。源泉の温度が低いため加温しており、循環しているので炭酸泉ならではのシュワシュワ感も無く、インパクトがないとの評価もあるようです。源泉温度は19.3℃、単純二酸化炭素泉です。

銀の湯外観
銀の湯外観
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温泉街

有馬温泉の街は、急峻な山間部の川沿いに造られた小さな街です。中心部の温泉街は3分から5分も歩くと街並みが途切れるほどの小ささです。坂に沿って旅館やホテルがあり、メイン通りにはお土産店や飲食店が立ち並びますが、数はさほど多くはありません。各々の旅館やホテルで過ごすことが多くなるかもしれません。

有馬温泉マップ
有馬温泉マップ 意外と小さな温泉街

温泉街のメイン通りの雰囲気は、情緒があって素敵です。道幅が狭いので日中は人で溢れかえっています。お土産屋さんは大繁盛ですし、飲食店は数が少ないこともあり、どのお店にも行列ができています。

有馬温泉街 メインストリート
有馬温泉、温泉街メイン通り 早朝のため人通りはない

温泉街のメイン通りから路地に入ると、高い櫓と煙突を有する「有明泉源」があります。夜間ライトアップされ、近くには「裏、有馬風」の新しくできた飲食店が並んでいました。ここの「金泉」は近くの6つの旅館に給湯されています。泉質は含鉄ナトリウム、塩化物強塩高温泉で源泉温度は90.1℃です。

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お宿「上大坊」

今回お世話になったのは、温泉街の中心部にある「上大坊」というお宿です。ここが使用している天神泉源は「含鉄・ナトリウム・塩化物強塩高温泉」の泉質で、海水の3倍のミネラル分を含んでいるため、体が温まりやすいのが特徴です。

なお、有馬温泉で「○○坊」と名の付く宿が多いのは、鎌倉時代に熊野十二神将に例えて建てられた「有馬十二坊」と呼ばれた坊舎(僧侶、信者の宿泊所)にあやかっているためです。

お宿「上大坊」外観
お宿「上大坊」外観 温泉街の中心にある

上大坊」の温泉は、なかなか迫力のある浴室です。脱衣室から階段を下りて浴室に向かいます。浴槽や周辺は鉄分で赤茶色に変色しています。浴槽のお湯は鉄分の「湯の華」が下に沈殿するため、浴槽に入るときには備え付けの「撹拌する棒」で「湯の華」を均一にしてから入ります。とても「濃い」お湯で、濃度的には「濃い目のお味噌汁」に入っている感じです。

写真ではわかりずらいですが、浴槽左側に「」が掛けられていて常時源泉が流れています。「樋」の途中に5カ所ぐらい穴があけて合って、普段は「込み栓」で穴をふさいでいますが、「込み栓」を抜くとそこからお湯が浴槽に注がれます。つまり「込み栓」を抜く本数で浴槽に注がれるお湯の量を調整し、浴槽のお湯の温度を調整する仕組みです。

上大坊の浴室 鉄分で赤褐色に変色している
お宿「上大坊」の浴室 出典:温泉ぷらす

めちゃおもろい温泉ぷらす

お宿「上大坊」の玄関わきの看板です。なんとも愉快な看板で、看板を見ているだけで楽しい気分になってきます。

上大坊 玄関脇看板
上大坊の玄関脇の看板

上大坊HP

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泉源

お宿「上大坊」の脇の路地を入ると、学問の神様「天神社」があります。境内にあるのが天神泉源で有馬温泉の代表的な泉源です。98℃の温泉がゴボゴボとたぎる音が聞こえ、煙突からは白い煙が立ち昇ります。地下206mで湧出し、源泉温度は98℃、含鉄・ナトリウム・塩化物強塩高温泉です。

天神社と境内にある天神社泉源
天神社と境内に噴出する「天神社泉源」

下の写真は御所泉源で、温泉街の反対側の狭い路地の中に位置しています。金泉が湧出し、近所の旅館に供給されています。源泉温度83℃、含鉄ナトリウム、塩化物強塩高温泉。

有馬温泉の「七つの泉源」は、そのすべてが温泉街の中に点在しているので、その後建設されたであろう山麓・山中の大きな旅館ホテルには「タンク」でお湯が運ばれています。そのため加温循環殺菌などの処理がされていますので、「濃い金泉」を楽しむならば、泉源近くのお宿に宿泊されることをお勧めします。

路地にある御所泉源
路地の一画にある御所泉源

温泉街の奥の方に炭酸泉源がありますが、訪れた時には枯れていて飲泉場も封鎖されていました。以前は湧出し、飲泉もできたそうなので残念です。一時的なのか枯れてしまったのかは不明ですが、有馬温泉の名物として「炭酸せんべい」のお土産もあることですので、ぜひ復活してもらいたいものです。源泉温度19.3℃、単純二酸化炭素泉。

炭酸泉源
炭酸泉源 現在は枯れている様子
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瑞宝寺公園

瑞宝寺公園マップ
瑞宝寺公園マップ

温泉街の中心から六甲川に沿って上流方向に急な坂道を10分程度歩くと瑞宝寺公園があります。境内には松やカエデが多く、晩秋の景観は関西屈指の紅葉の名所となっています。太閤・豊臣秀吉が、「いくら見ていても飽きない」と誉め称えたことから、「日暮らしの庭」とも呼ばれています。園内には、太閤秀吉が愛用したといわれる石の碁盤や、伏見城から移築した旧瑞宝寺の山門があります。紅葉の時期には、茶店が出店しライトアップも行われています。

下の写真左にあるのが、太閤秀吉が囲碁を打ったとされる「石の碁盤」です。紅葉を眺めながらゆるりと囲碁を打ち、一日をのんびりと過ごしている秀吉が目に浮かぶようです。

毎年11月2日・3日には「有馬大茶会」が公園内で開かれます。太閤秀吉は有馬温泉に度々訪れて心身を癒していました。有馬に滞在のと きは、千利休らと茶会を催し、あるいは地元の人たちを招いて有馬の風流を楽しまれたようです。このような故事にのっとり、茶の湯のこころと有馬温泉の風致を楽しもうと太閤を偲ぶ「有馬大茶会」が始められ、今年で75回目となります。

有馬大茶会の様子
75年の歴史を誇る有馬大茶会 出典:有馬温泉HP
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まとめ

お宿「上大坊」の金泉は、そのドロッとした濃さ強塩味が衝撃的です。天神泉源から近いため、お湯が酸化せずに供給され、かけ流しで楽しめます。ほど近いところにある「金の湯」は同じ金泉ですが泉源は有明泉源で異なります。「金の湯」は大規模な施設のため加水、加温、消毒がされていますので、さらっとした感じの金泉となっています。「上大坊」は立ち寄り湯も受け入れていますので、温泉好きの方は是非一度お試しいただければと思います。

上大坊HP

六甲川に架かる「ねね橋」
六甲川に架かる「ねね橋」

有馬温泉はその知名度に比べると、とても小さな温泉街の印象を受けました。しかしながら恵まれた「名湯」を守りつつ、太閤秀吉から続く温泉文化を大事に継承している誇りも感じる街でした。

街中にある「有馬芸子」のポスター
街中に見る「有馬芸子」のポスター

有馬芸子HP