砂場の歴史は豊臣秀吉の大阪城築城のころにさかのぼりますが、「糀町7丁目砂場藤吉」は江戸時代から続く老舗のひとつです。幕末維新当時の第11代当主が「室町砂場」と「虎ノ門大坂屋砂場」を暖簾分けしたのち、第12代当主が1912年(大正元年)に糀町(現:麹町)から現在の店舗がある南千住に移転して「南千住砂場」となり、現在は第14代当主が営業を継続しています。である
南千住砂場について
奥州、日光に向かう最初の宿場町として栄えた千住宿の一画である南千住に、第12代当主が1912年(大正元年)に店を移して以来、現在も営業を継続しています。「ジョイフル三の輪商店街」という昭和レトロ感あふれる商店街の中にあり、純和風の木造建築でありながら不思議と周囲の雰囲気と調和した佇まいとなっています。
![ジョイフル三ノ輪商店街アーケード入口](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/ジョイフル商店街-719x900.jpg)
「南千住砂場」の第11代当主が暖簾分けした「室町砂場」は1869年(明治2年)日本橋本店が開業し、その後さらに赤坂店が1964(昭和39年)に開業しています。もうひとつの暖簾分け先の「虎ノ門大坂屋砂場」は1872年(明治5年)の開業です。今も残る砂場のルーツは「南千住砂場」が最古であり、現在の当主は第14代でしっかりと暖簾を守り続けています。
南千住砂場の外観
現在の建物は、1954年(昭和29年)に建てられた総檜造り、木造3階建です。入口の軒のうえにさらに裳腰のように軒があるのは、1階の階高を高く設定しているためでしょう。連子や格子の窓の建具や入口のガラス戸の建具、周りに置かれた植栽などが老舗の蕎麦屋らしい雰囲気を醸し出しています。建物は荒川区の文化財に指定されています。
![南千住砂場 外観正面](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場外観正面-900x668.jpg)
建物側面にも入口がありました。現在は締め切って使用していませんが、かつてはここから2階座敷に上がる入り口だったのでしょう。
木造3階建てですが2階部分で、商店街のアーケード屋根と接してしまっています。
![南千住砂場 外観側面入口](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場外観側面-900x687.jpg)
![南千住砂場 外観2階とアーケード屋根の取り合い](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場外観3階アーケード-900x722.jpg)
南千住砂場の内観
船底天井で階高も高く開放的な空間です。数寄屋風の和の空間でとても落ち着く雰囲気です。客席は4人掛けのテーブルが5卓で20名程度を収容するこじんまりとしたお店です。小上がりは鉄道模型のジオラマを置いてあるので、客席としては使用していません。昼食時を避けてお邪魔したのですが客足が絶えることなく、根強い人気があるようです。地元の方と、「南千住砂場」を目的に遠方から来ている方と半々のように感じました。
![南千住砂場 内観 船底天井](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場内観-694x900.jpg)
南千住砂場のお蕎麦
淡白な感じとコシの強さが甘めのタレと相まってとても美味しいお蕎麦でした。量は少なめですが、出来たての蕎麦を美味しく頂くには、時間を置かずに食べられるこれくらいの量の方がいいのかもしれません。とはいえ、隣のお客さんは「ざる」のあとに追加で「かけ」を頼んでいました。やっぱり量が足らなかったのでしょう。
![南千住砂場 せいろぞば](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場蕎麦-900x693.jpg)
天ぷらは絶品です。大きなぷりぷりの海老と人参、ナス、水菜、サツマイモです。素材の美味しさはもちろんのこと、パリッと揚がった食感が絶妙です。天ぷらとせいろのセットを頼んだのですが、天ぷらも合わせて考えると量的にも十分満腹となりました。
![南千住砂場 天ぷら](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場天ぷら-895x900.jpg)
年季の入った湯桶に入ってきた蕎麦湯はものすごく濃厚でした。甘く濃いタレに負けることなく味を整え、蕎麦の風味たっぷりの濃厚な蕎麦湯は「もはやひとつの料理と言っても過言ではない」ほどの美味しさです。
![南千住砂場 蕎麦湯桶](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場蕎麦湯-1-900x779.jpg)
![南千住砂場 蕎麦湯](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場蕎麦湯2-1-892x900.jpg)
![突き出し 蕎麦みそ](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場突き出し-1-900x882.jpg)
店舗装飾、鉄道模型
店舗内部には「登録商標砂場」の看板がありました。ここが砂場の源流なんだな、と思いつつ店内を見渡すと何となく雑然としています。看板下のレジ廻りは種々のメモ等が溢れていますし、外部格子窓の内側にはウイスキーやら本、写真などが不統一に並べられています。
![南千住砂場 砂場看板 レジ廻り](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場内観厨房-900x865.jpg)
![南千住砂場 外部格子窓の内観 ウイスキーや本、写真など](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場入口棚2-658x900.jpg)
外に面しているかつての料理陳列ケースを見ると、鉄道模型が展示してありました。もっともその前にある植栽で模型はほとんど見えません。屋内の小上がりにも鉄道模型のジオラマが展示されています。これも衝立で仕切っているのであまりよく見えません。
![南千住砂場 かつての料理見本ガラスケース内に鉄道模型](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場外から模型-900x613.jpg)
![南千住砂場 内部小上がりには鉄道模型ジオラマが展示](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/08/南千住砂場小上がり模型-1-900x758.jpg)
まとめ
豊臣秀吉の大阪城築城時に端を発するという「砂場蕎麦」。その流れを汲む最古の店が「南千住砂場」です。今もファンの多い「室町砂場」や「虎ノ門大坂屋砂場」なども、ここから暖簾分けされて開業しています。「南千住砂場」にお邪魔してみますとお蕎麦も天ぷらも最高です。南千住という土地柄と昭和レトロな商店街の中にあるからでしょうか、庶民的で気取らない雰囲気に心温まります。また是非訪れてみたいお店です。
砂場蕎麦の別記事があります。ご興味のある方はお立ち寄りください。