誰しも「年齢」を重ねていきます。若さの象徴である体力や健康のピークを過ぎると「老い」はしばしばネガティブに語られがちです。しかし、「年齢を重ねる」ことは本当にマイナス面ばかりなのでしょうか。実際には、人生経験や知識の蓄積、人間性の深まりなど、年を取ることでしか得られない多くのメリットがあると思います。「年齢を重ねる」ことに前向きになれる視点と、それが「長寿」に結びつくことをお伝えします。
「加齢」によるマイナス面
加齢によるマイナス面は間違いなく存在します。まずは、①筋力・筋肉量が減り、日常生活の活動や運動能力が低下しますし、②関節のクッションである軟骨が薄くなり、膝や腰の痛みを訴えることが多くなります。また、③骨密度が低下し骨折のリスクが高まります。特に高齢女性は閉経後、骨粗しょう症になりやすい傾向があります。そのほか、④基礎代謝が低下するので体脂肪が増えやすく、体重管理が難しくなること、⑤免疫力が低下し感染症や慢性疾患のリスクが高まること、⑥認知機能の低下、⑦転倒による骨折や寝たきりになるリスク、などがあります。そして何よりも、⑧外見の変化、皮膚の弾力や水分保持機能が衰え、シワや乾燥が目立つようになります。
「年齢を重ねる」メリット
一方で、「年齢を重ねる」ことにより人生経験と内面の成熟が進み、若い頃には得られない多くの価値が生まれます。
1.知識と知恵の蓄積ーーー国立長寿医療研究センターの調査によれば「知識力」は40歳から70歳を過ぎる頃まで向上し続け、その後も大きくは衰えません。人生経験を通じて得た知識は、年齢とともに深みを増します。また、多様な経験を積むことで「的確な判断力と洞察力」が養われ、物事を多角的に捉え、困難な状況にも冷静に対処できます。成功だけでなく「失敗も蓄積」されることで、リスクを予測し、より適切な選択ができます。
2.人間関係の深まりーーー「年齢を重ねる」ことで、自己中心的な視点から「他者への理解や思いやり」が自然と身につきます。自分の経験や知識を若い世代に伝え「社会や家族に貢献」する役割を担っていることと、義務的な付き合いから解放された「自分らしい人間関係」を築くことで、心の平穏を得ることができます。
3. 精神的な安定と幸福感の向上ーーー自分の得意・不得意や限界がわかってきますので、等身大の自分で生きることに満足した「自己肯定感」に到達します。また、一通りの人生経験を積んだことで、若い頃のような「漠然とした不安」が減り、「今をどう充実させるか」に意識が向いて、自分に合った目標に「じっくり取り組む」楽しみが生まれます。
前向きな加齢観と長寿の関係
「年齢を重ねる」メリットは、人生経験による知識や人間関係、精神的な安定、幸福感の向上などがありますが、これらを「前向き」にとらえることは「長寿」と密接な関連があります。加齢を肯定的に捉える高齢者は、社会参加や生涯学習にも積極的で「生きがい」に変えている傾向があり、これが認知機能や精神の安定に寄与します。また、他者との良好な人間関係やコミュニティとのつながりも、孤独感や落ち込みを減らし心身の健康にプラスの影響を与えます。結果として運動、睡眠、食事などの生活の質が高まり、健康で長生きできる可能性が高くなります。
まとめ
「年齢を重ねる」ことには、体力や健康面でのデメリットが確かに存在します。しかし、それ以上に人生経験や知識の蓄積、人間性の成熟、社会的な役割の拡大など、「年齢を重ねる」ことで得られる多くのメリットがあります。加齢を「衰え」としてではなく「成長」と「新たな可能性」として捉えると、人生の楽しみ方が多様化した前向きなものとなり、結果として「長寿」に結びつくこととなります。
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