鉄輪温泉で目覚めると、きれいな「朝焼け」に何度か遭遇しました。空が淡い朱色に染まり、やがて光が街を照らし、気温がゆっくりと上がり始めます。鳥たちがさえずり出し、空気はどこまでも澄み渡っています。「朝」の始まり、世界が静かに目覚めていく神秘的な時間帯です。「朝」は「不思議な力」を持っていて、人々の精神や文化活動にも大きな影響を与え、人生の幸せに大きく貢献しているのかもしれません。
自然としての魅力
「朝」には、ただ美しいだけではない「不思議な力」が隠されています。太陽が昇ることで大地が目覚め、生命が再び動き出す様子は、宇宙的な秩序や生命の永続性を感じさせます 朝は夜の眠りから目覚めたばかりの時間であり、外界の刺激や雑音が少なく、空気も澄み切っています。この静寂と透明感は、人の心に「リセット」や「浄化」の感覚をもたらします 朝の鳥のさえずりは、夜の闇から昼の光への移行を告げる「自然のアラーム」です。朝の空気を吸い、鳥の声に耳を澄ませ、朝の光を浴びるだけで、日々新たな自分に生まれ変われるようです。とりわけ冬の朝は湿度が低く、空気中の水分が少ないため、空気の透明度が高くなります。さらに冷たい気温が空気を引き締め、余計な粒子や雑味が減るのでしょう、まるで「空気自体がデトックスされている」ような感覚になります。
精神に与える影響
多くの宗教やスピリチュアルな伝統で、「朝」は「神聖なエネルギーに満ちた時間」とされています。ヒンドゥー教では夜明け前を「ブラフマ・ムフールタ」と呼び、瞑想や祈りに最適な時間帯としています。睡眠から目覚めた直後の心は、外界の影響をほとんど受けておらず、穏やかで純粋な状態です。この時間に瞑想や祈り、自己対話を行うことで心の「浄化」や「リセット」が促され、その日一日さらには人生全体をポジティブな意識で満たすことができます。脳科学的にも起床直後の脳はアルファ波が優位で、潜在意識とつながりやすい状態であることが分っています。これが古今東西で「朝」が神聖視され、多くの成功者が「朝」を大切にしている理由です。
伝統文化との融合
日本の伝統文化においても、「朝」は夜の闇が明け、太陽が昇る「再生」の象徴としてとらえています。
神社では、朝の神事は神様へ感謝と祈りを捧げることで、心身や場を清め、神聖な空間と時間を創出します。神職自身が心を整え、日々のありがたさを静かに深く自覚し、一日を良いものにしようとする日本人の精神性が表れています。
武道の世界でも「朝」は特別な意味を持っています。寒稽古のような厳しい修練では、自分の弱さや怠惰に打ち克つ経験となり、忍耐力や精神力、人格や道徳性の成長につながります。また、朝の静けさの中で稽古に集中することで、雑念を払い平常心や不動心を養うとともに、稽古を完遂することで、達成感と自己肯定感が高まります。
茶道においても、特に夏の暑い時期には、日中を避けて朝に茶事(朝茶事)が行われます。朝の涼しさや静けさは、茶道が重視する「清浄」「静寂」と調和します。また、日本には「朝茶はその日の難逃れ」「朝茶は七里帰っても飲め」といった諺が残っています。「朝」にお茶を飲むことで、その日は災いから守られ、幸せに過ごせるという言い伝えです。
また「早起きは三文の徳」という諺もあり、朝の時間帯には静寂と集中の環境が整っていることから、学習や仕事、創作活動に最適だとされています。現代科学でも、朝は意志力が温存されていて、脳がリセットされた状態であるため、最も効率よく物事に取り組める「ゴールデンタイム」とされています。
まとめ
「朝」は、自然界と人間の営みが静かに交差する神秘の時間です。太陽の光、澄んだ空気、鳥のさえずり、神事や稽古、そして一杯のお茶――それぞれが「始まり」の力を私たちに与えてくれます。「朝」の不思議な魅力に気づき、意識的にその時間を大切にすることで、私たちはより豊かで健やかな一日を紡いでいくことができるのかもしれません。
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