「不寛容」な言動こそが、日本人の幸福度が低い原因だった

中年の男性が、様々な迷惑行為に治して寛容に接している様子 エッセイ

「不寛容」な事象の増加

テレビやインターネットなどで、他者の過ちや欠点を厳しくとがめる様子、「不寛容な態度」が多くなってきているような気がします。謝罪会見の過熱や不倫問題の追及などで過激な意見や「正義感」による糾弾が日常的に行われ、SNSや掲示板などの匿名性の高いネット空間では他者への誹謗中傷や攻撃的な言動も繰り返されています。ネット上の過激な言動は現実社会にも波及し、コンビニ店員への暴言や子どもの声への過剰なクレーム、さらには「除夜の鐘がうるさい」といった苦情で伝統行事が中止されるなど、日常のささいな場面でも不寛容さが目立つようになりました。こうした現象は、社会全体が「白黒はっきりさせたい」「正義を主張したい」という風潮に覆われ、他者の意見を尊重する寛容性が低下してきているのかもしれません。 

「不寛容」になる理由

性格、ストレス、自己防衛

「不寛容な言動」は、個人の性格よりもその人の置かれた精神状態に深く関係しているとされます。例えば、自分に自信があり生活に満足しているときは心に余裕が生まれ、他者に寛容になりやすいものです。一方、生活が苦しくなったりストレスが増大したりすると、心の余裕がなくなり不寛容になりやすくなるようです。また、強いストレスの下では、自分の信条や価値観を硬直的に守ろうとする傾向が強まり、「防衛機能」として他者を攻撃したり排除したりする行動をとることもあるようです。

日本人の特性

「不寛容」の背景には、日本人特有の国民性が影響しているともされています。日本社会は「同質性」が高く、集団の中で異質な存在を排除する傾向を持っています。また、「減点主義」の教育を長年にわたって受けてきたことや、「同調圧力」が根強い社会であることも、少数意見や異なる価値観が受け入れられにくい風土となっているのでしょう。さらには、「強者に弱く、弱者に強い」という日本人の性格や、権威や規則に対しては従順である一方、立場の弱い人や異質な存在には厳しく当たることが多い性向も、「不寛容な言動」を助長しているようです。

日本人の幸福度が低い理由

国連の「世界幸福度ランキング」調査によると「幸せを感じる人」の順位は、日本は54位で先進諸国の中では最低順位です。この結果を詳細に見てみますと、「人生の選択の自由度」と「他者への寛容さ」の項目が目立って低く、その他の項目、たとえば「一人当たりの国内総生産(GDP)」「社会的支援」「健康寿命」に関しては、上位国との差はありません。また、ハーバード大学のロバート・ウォールディンガー教授が行った「幸福と健康の維持に必要なもの」を探求した研究によると、「人を幸福で健康にするのは、富でも名声でも無我夢中に働くことでもなく、良い人間関係に尽きる」とのことです。そして大切なのは、人間関係の質であり、数ではない点です。この温かな人間関係を築くうえで必要となるのが、自分と意見や立場が異なる人たちに、どれだけ理解を示すことができるかという「寛容さ」であることが強調されています。日本人が豊かさや幸福感を感じられない理由として、「他者への寛容さ」が少ないことが、大きな理由のひとつであることが明らかにされています。

Forbes 日本人の幸福度が低い 寛容さ

まとめ

「不寛容な態度」は、個人の心の問題であると同時に、ストレス社会、日本人の国民性など多様な要因が複雑に絡み合って生じています。現代日本においては、ネット社会や同調圧力などの影響などが不寛容な態度が助長され、結果として日本人の幸福度の更なる低下を引き起こしているようです。「完璧さ」や「正しさ」だけを求めるのではなく、「不完全さ」や「ゆるさ」を許容し、良い人間関係を築いていく「心の余裕」が必要なのかもしれません。