女性脳とマルチタスク能力、通訳業界での活躍

国際会議同時通訳の様子。通訳者はすべて女性。 エッセイ

通訳者の75%は女性

業界では常識のようですが、通訳業界は女性が大多数を占めています。国際会議通訳者協会のデータによると、なんと通訳者の75%は女性だそうです。その理由は「女性の方がコミュニケーション能力に長けている」「マルチタスクがうまい」「相手を理解する能力に秀でている」などとされていますが、この極端な男女比率の偏りにより少なからず不便も生じているようです。たとえば、中東の要人たちは絶対的に男性通訳者を好みますし、プロスポーツチームの通訳では、裸の男たちが歩き回るロッカールームでも仕事をするので男性通訳者が適任です。一部企業では男性CEOの通訳は同じ男性の「太くて低い声」が好まれます。なぜなら通訳者が女性だと、聞き手は耳から入ってくる女性の声を、目で見ている「男性イメージの声」に脳内変換しなければなりません。当然、聞き手には余分な負荷がかかりますので、男性通訳者の方が好ましいこととなります。ということは、少数派の男性通訳者の方が「引く手あまた」となっているのかもしれませんね。

通訳と女性脳

それでも女性通訳者が圧倒的に多い現実には、確固とした理由があるはずです。まず、女性に多いとされる「マルチタスク能力」は、同時通訳においては非常に大きな強みとなっています。通訳の現場では「聞く」「理解する」「訳す」「発話する」「メモを取る」「会議の流れや話者の意図を把握する」など、多数のタスクを瞬時に、かつ同時にこなす必要があるためです。同時通訳は「究極のマルチタスク」とも呼ばれ、数多くのタスクを高速かつ正確に同時進行させつつ、脳内のさまざまな領域をフル活用し、多方面に気を配りながら作業をしています。つまり、マルチタスク能力に加え、言語的センス、高い共感力、変化への敏感さ、平和的調整力などの「女性脳」の素晴らしい特徴が、まさに通訳業にぴったりとフィットしているのでしょう。

女性脳と男性脳の違い

さて、ここで女性脳と男性脳の違いについて整理しておきましょう。すでに見た通り「女性脳」は複数作業を同時にこなすマルチタスク力共感力感情の読み取り、豊かな言語表現などが特徴とされ、「男性脳」は論理的思考空間認識能力、直線的で効率的な問題解決を得意とします。また、女性は左右の脳を繋ぐ「脳梁」が男性よりも50倍も太いため、「感性」の右脳と「言語や思考」の左脳の連携が良く、右脳で生まれる「感覚的なものや感情」を、左脳が司る「言語」としてアウトプットすることが上手です。一方男性は「脳梁」が女性の50分の1の太さですので、右脳と左脳の情報連携は少なく、そのため「集中力」という観点では、女性の50倍も高くなるとされています。

ここで女性脳と男性脳の違いについて、もうすこし具体的に見ていきましょう。

記憶方法の違い

物事を記憶する方法と記憶する力については、女性脳の場合は耳から情報を収集し、印象残った「言葉」や「フレーズ」を記憶するのが得意です。一方、男性脳の場合は全体の「イメージ」を把握して記憶するのが得意なので、地図や道順などを記憶する力が高いと言われています。

考え方の違い

考え方の違いとして、男性脳は「論理的」に考えて原因を追究し、分析を行い解決しようとしますが、女性脳は過去の「経験」や「体験」を振り返って対処する傾向が強いとされています。また、女性脳の方が感情に基づいた行動が多いとも言われています。

会話の目的の違い

会話では、男性脳は「結論」や「ゴール」がはっきりしたやり取りが得意で、女性脳は「共感」や「プロセス」を重視した、目的地が定まらない雑談が得意だとされています。この違いは「話を聞いて共感してほしい女性」と「解決策を求める男性」が、すれ違ったり衝突してしまう原因として、よく知られているところです。

恋愛の違い

恋愛での考え方は、男性脳と女性脳では正反対の反応をするようです。男性脳は、ほんの些細な好意でも「もしかして気があるのかな?」と、アプローチをポジティブに捉えることが出来ますが、女性脳はアプローチがあっても、喜ぶと同時に警戒もします。「ただの遊びかもしれない」「誰にでも同じことを言っているかもしれない」「勘違いしないようにしよう」など、ネガティブに受け止める傾向が強いようです。本能的に多くの子孫を残そうとする男性に対して、女性の場合は慎重に考えてより優秀な遺伝子を残すことを重視します。この違いが恋愛におけるアプローチの捉え方の違いに、つながっているようです。

見え方の違い

ユニークなところでは、男性と女性では「見え方」も違います。人間の目の網膜には「M細胞」と「P細胞」があり、M細胞は「速度」「方向」「位置」などを感知し、P細胞は「色」「質感」などを感知します。男性はM細胞が多く、動きを捉えるのが得意で、女性はP細胞が多く、色や質感の細かな違いに気づきやすい特徴を持ちます。この違いは、男性が狩猟生活で方向感覚や動くものを捉える能力が発達した一方、女性は子どもの変化や周囲の異変・危険を素早く察知するために、色や質感に敏感になったと考えられています。

女性脳と男性脳の見分け方

こうした「女性脳」「男性脳」の区別は、その脳の一般的な傾向を示すものであり、性別だけで得手不得手を断定するのは不適切です。しかしながら各人の脳が、女性脳的なのか男性脳的なのかを知ることは、自分自身の生活や、対人関係において有益なことかもしれません。

イギリスの心理学者ジョン・マニング博士は、人差し指と薬指の長さの比率が、胎児期の男性ホルモン(テストステロン)暴露量を反映しており、これが「空間認識能力」や「言語能力」と相関していることを明らかにしました。薬指が人差し指より長い人は、胎児期にテストステロンの影響を強く受けており、「空間認識能力」などの「男性脳」の傾向があり、人差し指が長い人は、「言語能力」や「コミュニケーション能力」など「女性脳」の傾向があるとしています。

まとめ

脳には「女性脳」と「男性脳」という二つの傾向があり、これらは実際の性別を現すものではないものの、部分的には的を得た、わかりやすい表現とも言えるでしょう。自分の「脳型」については薬指と人差し指の長さを比べればわかりますので、自分の行動特性や思考スタイルの傾向を知るのは興味深いことだと思います。ただ、これも脳型の確定的な診断手段とは言えず、あくまでも参考情報のひとつとして、その運用には科学的慎重さが求められると思います。