紅葉のメカニズム 光合成の効率と再生

紅葉の写真 エッセイ

秋になると街中の街路樹や公園の木々が色づき秋の深まりに華を添えてくれます。春から夏にかけては緑色だった木々の葉が鮮やかな赤色黄色となり、季節の推移をはっきりと教えてくれます。紅葉で有名な寺社仏閣を訪れたり、山深く幾重にも広がる紅葉を狩りに出かける方も多いのではないかと思います。日本の豊かな四季の楽しみのひとつです。

そもそも「なんで色が変わる」のでしょう。落葉広葉樹は生育に不適な季節になると、すべての葉を落とし休眠状態になりますが、散らす前に葉の色が変わることが紅葉です。そもそも葉が緑色に見えるのは光合成に必要な「クロロフィル」が緑色の色素を持ち、夏の間は活発に活動しているためです。秋になり日照時間が短く光合成に適さない季節となると「クロロフィル」が分解され、葉の中にある黄色の色素「カロテノイド」が相対的に多くなり、葉は黄色に色づきます。また、光合成効率が低い葉をつけていると、葉を維持するエネルギーと見合わないので、落葉広葉樹は栄養を幹へ回収したのち葉を落とします。その準備として「離層」を作りますが、その過程で作られるのが赤色の色素「アントシアニン」で、葉は赤く発色することとなります。その後も葉の老化は進み、黄色や赤色に変化したのちは、最終的に植物に含まれる「タンニン」の影響で茶褐色へと変化します。

冬を前にして光合成効率が落ちるから、自ら葉を落とすメカニズムが紅葉です。機能が低下し養分が不足し、瑞々しい葉は黄色や赤、茶に変色していきます。ある種「のメカニズム」のような冷徹さを感じなくもないですが、春には新葉が芽吹きます。環境に合わせて休眠に入る紅葉について、アルベール・カミュ(仏/小説家)は「あらゆる葉が花となる秋は、第二の春である」と言っています。美しい紅葉を楽しみたいと思います。