各駅停車でゆっくりと発見の旅

登別駅ホーム エッセイ

「青春18きっぷ」というのがあります。夏休みなどの長期休暇がある春、夏、冬の期間限定で、急行や各駅停車ならば1日2,400円で乗り放題になるきっぷが発売されます。販売は、5回分12,000円がセットになっていますのでご留意ください。利用にあたっての年齢制限はありませんので、「気持ちが青春」の私も何回か利用したことはありますが、のんびりとした行程で非日常の時間が過ぎていく各駅停車の旅もなかなか楽しいものです。車窓の景色を眺めることはもとより、車内で繰り広げられる人間観察も面白いものがあります。

北海道を旅行したおり、登別温泉から新千歳空港に向かう際に各駅停車でのんびり行くことにしました。登別温泉からの路線バスとの接続が悪く、また北海道の列車の本数が少ないこともあって登別駅で1時間ちょっとの待ち時間がありましたけど、そんなことは気になりません。逆方向の函館方面に向かう特急列車が来ると、多くの外国人を含む待合室の半分の人たちが乗っていきました。なるほど登別温泉は札幌・千歳と函館の間に位置しているので、北海道の周遊観光の一環に組み込まれているのですね。

千歳方面行きの各駅停車が来ましたので、乗客の少なそうな最後尾の車両に向かいました。ロングシート(車両側壁に沿って座席が連続している)ですが、乗客が少ないのでウイスキーのハイボールを作ってチビチビやり始めます。 と、「白老」という駅で観光客と思われる方々が何組か乗ってきました。「こんなところに何があるんだろう?」と思って外を見ると、「ウポポイ」というアイヌの歴史と文化を紹介し、伝承するという施設が建っています。一般公開は2020年(令和2年)ということですので、まだ比較的新しい施設のようです。敷地内には「国立アイヌ民族博物館」も併設されているそうで、ちょっと面白そうです。次回は訪ねてみることにしましょう。

しばらく進んで、錦岡駅に着くと若者が大勢乗ってきました。座れず立っている人もいますので、ハイボールをそっと隠します。みんな同じ年ごろで仲間同士のようですので、おそらく近くの苫小牧工業高等専門学校の学生さん達でしょう。高専は全国に58校あり、その多くが国立です。5年制で工業系が多く、卒業後は社会に出る即戦力となりますし、大学の3年生に編入することも可能です。その分授業の密度が濃く、単位の取得も厳しいと言われています。 そうでしょう、乗ってきた学生さんたちは、みんな真面目で頭が良さそうな、感じのいい方ばかりでした。

苫小牧駅を過ぎて「そろそろ南千歳駅で乗り換えだな。」と思って地図を見ると、線路の近くに「ウトナイ湖」があるようです。残念ながら車窓から湖面は見えませんでしたけど、調べてみるとハクチョウなどの渡り鳥の中継地となっていて、250種類以上もの鳥たちが確認されているとか。1981年(昭和56年)には日本野鳥の会によって日本初のバードサンクチュアリ(保護区、聖域)に指定され、1991年(平成3年)には日本で4番目のラムサール条約(湿地保存の国際条約)登録湿地となったそうです。新千歳空港からも近いですし、次回はぜひバードウォッチングに訪れてみようと思います。

時間短縮、スピード優先の「特急列車」の移動も時には必要ですが、ゆっくりと時間をかけた「各駅停車」の旅も捨てがたい魅力があります。今回もいくつかの気づきと、思索のきっかけを与えてくれました。

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北海道に関する別記事があります。ご興味のある方はお立ち寄りください。