みどりの窓口の削減は、個々の事情に寄り添えない~合理化と人の自由

中野スタンド外観 日常生活で想う
日常生活で想う
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「みどりの窓口」の削減

JR東日本は2021年に「みどりの窓口」を約440駅から2025年までに約140駅へ削減する方針を示しました。「えきねっと」などのネット予約の普及や、指定席券売機の高機能化、コスト抑制、そして人手不足がその理由です。駅員の確保が難しい時代に、すべての駅で従来型の対面サービスを維持し続けることは、企業経営の面から見ても容易ではありません。したがって、業務の一部を機械化する方向性そのものは不合理ではないでしょう。単純な切符購入はネット予約や券売機を使える人にとっては、営業時間外でも手配できるし、窓口に並ぶ必要もないので便利です。遠隔のオペレーターと会話できる「話せる指定席券売機」では、学割など書類確認を要する手続きにも対応できます。しかし実際に起きたのは、利用者が機械へ静かに移行するという理想像ではありません。残った窓口には長い列ができ、機械だけでは用事を済ませられない人が行き場を失いました。

失敗の本質

「みどりの窓口」は単純な販売カウンターではなかったのです。複雑な乗車券、複数の割引制度、変更や払い戻し、海外からの旅行者の案内、機器操作に不慣れな人の相談など、機械だけでは完結しにくい業務を処理している場所だったのです。窓口を急速に減らしたため、窓口での処理を希望する人が残った駅に集中し、2024年春には混雑が深刻化したため削減方針を凍結しました。2026年時点では209駅の窓口を当面維持する方針に転換しています。JR東日本発表

急速な窓口削減が混雑を招いた背景には、利用者を「平均的な一人の乗客」として捉えすぎたことがあるようです。たとえば、家族旅行の切符を複数人分まとめて手配する人、途中下車や立ち寄り経路を含む複雑な旅程を組む人、障害者割引や学生割引の条件を確認したい人、初めて日本の鉄道を利用する外国人旅行者にとって、画面上の選択肢だけで切符の手配は完結しません。操作ができるかどうかではなく、「自分固有の事情」をどう処理できるかが重要だったのです。

合理化と人の自由

「みどりの窓口」削減の事例で示唆されているのは、便利で合理的な仕組みは、人間をいつの間にか「平均的な利用者」と想定していることです。機械化・自動化・ネット対応は、私たちの生活から多くの手間を取り除きました。切符はスマートフォンで予約できますし、銀行の手続きは画面で完結し、ネット注文すれば店頭に並ばずとも商品は翌日に届きます。その恩恵は社会にとって素晴らしい進歩ではありますが、その仕組みはどのような人を「標準」として想定しているのでしょう。自動化された仕組みは、あらかじめ用意された選択肢を選ぶことで最も力を発揮します。片道・往復・変更・払い戻し、といった画面の案内に従い、利用者が自分の希望を適切な項目へ翻訳できるなら、機械は速く正確で疲れません。しかし、現実の人間の事情は、選択肢のように整っていないこともあります。途中で立ち寄りたい所がある、混雑を避けたい、乗り換えを減らしたい、余裕のある移動にしたい、変更しやすい切符を選びたいなどは、どれも特別な要求ではありません。けれども画面の設計はしばしばそれを「想定外」と呼びます。機械が人間の事情に合わせるのではなく、人間が機械の選択肢に合わせて自分の希望を整理し直す必要があります。

有人窓口の意味

有人の窓口は機械よりも遅く、曖昧で、コストがかかります。効率の尺度だけで見れば、そこには無駄があります。しかしその無駄は、人間の事情を受け止める余白でもあります。窓口の係員は、切符を売るだけではありません。「この経路なら乗り換えが少ないですよ」「途中下車をするなら、こちらの方法がよいでしょう」「その条件なら、別の切符のほうが安心です」と、利用者の言葉になりきらない希望を具体的な選択へ翻訳してくれます。人は最初から自分の希望を明確に持っているわけではありません。相談し、説明され、選択肢を示されることで、初めて利用者自身も自分が何を優先したいのかを知ることができるのです。

有人窓口と機械化の共存

有人の窓口を残すべきだという議論は、すべての駅に昔と同じ窓口を復活させるべきだ、という意味ではありません。対面サービスを無制限に維持することは現実的ではありませんし、単純な購入や定型的な変更、日常的な確認は機械に任せればよいでしょう。問題は人を減らすことではなく、人にしか扱えない「曖昧さ」まで消してしまうことにあります。機械が提示する選択肢だけでは処理しきれない事情を抱える人に寄り添い、人生は定型通りに進まないという前提を、社会が受け入れることのひとつが有人窓口なのでしょう。成熟した社会に必要なのは「便利な機械」と、困ったときに「人に相談できる」両方の道です。つまり、機械化と有人対応を対立させず、役割を分担することが必要です。

  • 定型的で簡単な購入や変更は、アプリ、ネット予約、券売機へ移す
  • 画面操作が難しい人には、遠隔オペレーターや案内スタッフを準備する
  • 複雑な旅程、制度確認、障害や言語など個別事情への対応は、有人窓口が担う
  • 窓口を地域情報、物販、待ち合わせ、観光案内などと組み合わせ、空間と人員の稼働を高める

NAKANO stand

「NAKANO stand」内観。みどりの窓口とコンビニが併設

中野駅南口に2024年に開業した「NAKANO stand」は、有人サービスを残しながら駅の省力化を考えるうえで、ひとつの示唆的な試みです。窓口を日常的な買い物や地域との接点に組み込み、駅の空間を多目的に利用することで、人を配置するから効率が悪い場所とはせずに、相談・情報・地域性・安心を支える社会的な装置として再設計しています。「NAKANO stand」には、みどりの窓口、コンビニNewDays、地域の情報発信「standスペース」があり、切符を買うためだけの閉じた空間を、生活と旅の接点に変えています。窓口で順番を待つ間に、買い物やイートインスペースの利用、掲示物を眺めて過ごすことができます。単に「窓口とコンビニを一緒にしただけ」と見る向きもありますが、しかし本質は有人サービスを孤立させず、採算を生む日常利用と結びつけた点にあるのでしょう。人に寄り添う「有人窓口」を守るための一つの現実的な知恵なのかもしれません。

まとめ

「NAKANO stand」に行くと順番待ち番号の発券機があって、10人位待っています。やはり混んでますね、みんな手持無沙汰に周辺をウロウロしています。夕方でしたのでコンビニでハイボールとチーズを買って、3席しかないイートインスペースで時間を潰します。ひと缶飲んでもまだ5人位の順番待ちですので、もうひと缶買って時間調整です。待ち時間のストレスがなくて「NAKANO stand」は、僕にとっては高評価です!

JR東日本HP 「NAKANO stand」