吉原大門近くの日本堤の土手沿いにあった「土手の伊勢屋」は、1889年(明治22年)創業で130年を超す歴史を誇ります。初代店舗が関東大震災で倒壊したのち、1927年(昭和2年)に現在の建物を再建し、太平洋戦争の戦禍を免れ現在に至っています。築100年の歴史建築と、美味しい天丼のご紹介をいたします。
土手の伊勢屋 外観
入母屋造りの瓦屋根で、軒下と妻面(三角部分)は漆喰仕上げになっています。2階壁面は下見板張りで1階は連子格子、1階正面左側は店先のカウンターになっていて、腰壁は石造りになっています。
石の腰壁の店先カウンターのところはちょうど厨房ですので、ここで持ち帰りのお客さんに天丼を提供していたのでしょう。1階の側面奥部分は大和塀(板を外と内で交互に貼る)で視線を遮りながら通風を確保しています。
大きな木製彫刻の立体看板です。一文字ずつ付いている雨除けが、アクセントになっています。
趣のある行灯風の看板で道行く人を呼び寄せていたのでしょう。現在は11時から14時までのお昼営業のみで、夜の営業は行っていません。
土手の伊勢屋 内観
入り口を入るとテーブル席が並び、正面奥が小上がりの座敷になっています。店内の趣のある「額」や「置物」「飾り付け」で、レトロな雰囲気を醸し出しています。ガラス建具のガラスには天丼種の代表格の海老が透かし彫りになっています。建具の木枠が使い込まれてすり減っている様子に、歴史の長さを感じます。小上がりの座敷から外を見ると、視線のすぐ先は大和塀ですが、塀の凹凸から漏れる風や光で圧迫感が和らぎます。
土手の伊勢屋 天丼
天丼は、イ)ロ)ハ)の3種類です。ふつうは、松)竹)梅)などとしますが、土手の伊勢屋では「それぞれの丼に良さがある」として、あえて格付けをせずイ)ロ)ハ)としています。食材は鮮度にこだわり、特に穴子は専用水槽で毎日朝〆の新鮮なものを提供しています。サクッとした食感と濃い目のタレ、厳選したお米が相まって、とても食べやすくアッという間に完食しました。写真は天丼ハ)で、穴子、海老、白身魚(コダイ)、小エビとホタテのかき揚げ、ハス、しし唐、みょうが、です。
行列ができる店
土手の伊勢屋の営業は、11時から14時のランチ営業のみです。三ノ輪の駅からは徒歩で10分程度の少々不便なところです。平日のお昼休み時間を外せば、すぐに入れるだろうと思って、13時に行きましたら写真の状態です。14人も待っていましたので、鷲(おおとり)神社を参拝して、少々時間をつぶして13時40分に再訪しましたら、3人待ちで入店できました。予約は取らないお店ですので、時間に余裕があるときにお伺いしましょう。
まとめ
土手の伊勢屋の建物は、2010年に国指定の登録有形文化財に指定されています。迫力ある外観や内部のこだわりとともに、使用されている木材がひのき、けやき、さくら、日本杉など多岐にわたっていることも、評価の一因となっています。
天丼はお世辞抜きに美味しいです。素材、食感、味、油、タレ、お米のどれをとっても文句のつけようはありません。量は少し多めですが、気にならず完食できましたし、食後の胃もたれもありません。個人的には、今まで食べた天丼の中で一番おいしいと思います。お時間に余裕のある時に、お伺いしてみてはいかがでしょう。