草津温泉は、日本三名泉のひとつとされる天下の名湯です。長い歴史と強酸性の泉質、日本一の自然湧出量、毎分36,839リットル(ドラム缶184本分)を誇ります。6つの源泉があり、数多くの旅館やホテル、有料の日帰り温泉施設のほか、19の無料共同浴場にも豊富な温泉を供給しています。共同浴場のうち「3つの共同浴場」は、観光客も入ることができます。その共同浴場で出会った地元の方から「熱いお湯の入り方」を教わりましたので、お伝えいたします。
白旗の湯

施設概要
「白旗の湯」は、草津温泉のシンボル「湯畑」の脇にあり、1193年に源頼朝が狩りの際に発見し入浴したと言い伝えられています。当初は御座の湯と呼ばれていましたが、1897年(明治30年)源氏の白旗(しらはた)にちなんで「白旗の湯」と改称されました。(源氏の白旗と平家の赤旗で紅白対戦の起源ですよね)
男女別の入口となっていて、左の男子側の浴場には2階建相当の大きな換気用の櫓があり、その下が湯舟「ぬる湯」です。この湯船の脇にはもうひとつ湯舟があり、こちらは「あつ湯」となっています。
入り口には靴箱があって脱衣場には棚があるのみです。ロッカーなどの設備はありませんので貴重品などは持ち込まない方が無難でしょう。



白旗の湯のお湯
供給されている温泉は「白旗源泉」で源泉温度は55.5℃、強酸性でph2.1、白濁しています。白旗温泉は草津温泉の中で、最も熱いお湯とされていて、あつ湯は49℃、ぬる湯は47℃ぐらいになっています。毎朝5時半から6時半の掃除を終えると、給湯の蛇口を全開にするため、早朝はとても熱くて入れません。地元の常連の方やボランティアの方々が「湯もみ」して温度を下げてくれています。
朝の7時過ぎに行きましたが、「あつ湯」には5秒も入っていられません。常連さんが湯もみしてくださっている「ぬる湯」でも15秒くらいが限界です。お湯は白濁していて、強酸性のため目の粘膜がちょっとヒリヒリしますが、しっとりとしたいい感じのお湯が心地よいです。
熱いお湯の入り方 ~地元の人に教えてもらった~
大胆な湯もみ
熱いお湯に悪戦苦闘していると地元のボランティアの方が来られて、「ぬる湯」に入って足で大胆に湯もみをしてくださいました。お礼を言って入ろうとしたら「お湯が揺れているから、静まってからの方がいいよ、お湯が動くと熱いから」と教えていただき、その間いろいろなお話を伺いました。そもそもボランティアが組織されたのは、毎年何人か事故で亡くなっているので、熱いお湯の入浴方法を伝えるために有志により発足したそうです。
頭にかけ湯
かけ湯は体をお湯に慣れさせ、エチケットとして身をきれいにするものです。熱いお湯に入る場合には、それに加えて「頭に手桶で10杯くらい」熱いお湯かけるといいそうです。しゃがんで頭を前に出してお湯をかぶり、事前に脳の血管を熱さに慣れさせます。
手をお湯から出す
お湯につかるときに、両手の「手首から先を水面上に出す」と、効果抜群です。お湯の熱さは足先や手先から伝わってくるため、手をお湯につけないことに加え、手のひらを空気にさらすことによりラジエターの役割が期待できます。実際に手を出して空気中の冷気を取り込むイメージを持つと、熱いお湯でも長くつかることができました。
地元民のおもしろ小話
- 草津には大きな病院がないので、脳溢血で倒れた場合は群馬大学病院まで搬送して2時間かかる。70分以内の処置だと生存率は高いが、2時間ではアウト。これが熱いお湯入浴法を指南するボランティアが始まった理由のひとつ。
- 草津のお湯は強酸性なので、五寸釘でも10日で溶けてなくなる。口に含んだらよくすすがないと歯が溶けてしまう。いっぽう草津のお湯は眼にはいい効能があるので、草津には歯医者が多く、眼医者は少ないとか。
- 草津の熱いお湯を頭にかけていると、頭皮の汚れや脂分が清浄され白髪がなくなる。ただし抜け毛には効果がない。
- 全国の温泉地でも完全無料というのは、草津温泉だけだろう。草津温泉では募金箱なども一切置いていない。観光客を受け入れている3つの浴場は町営で、他の16浴場は地元の地区が運営しているため地元民だけの利用としている。
- 白旗の湯は湯畑に近いこともあり、取り壊して駐車場にするという計画も浮上したが、署名活動の結果、存続することになった。
地蔵の湯

施設概要
「地蔵の湯」の建物自体は2006年(平成18年)に建替えられたものです。温泉は地蔵源泉から供給され、源泉温度は53℃、強酸性のph2.05、少し白濁しています。割と大きめの湯舟で4~5名は入れるでしょうか。床は白旗の湯と同じく木造りです。ここにペタッと座って火照った体を冷ますのが、とても気持ちいいです。白旗の湯のぬる湯が47℃だとすると、感覚的には45~46℃といったところでしょうか、そこそこの時間ゆっくり入っていられます。もちろん「手をお湯から出して」の入浴です。

「地蔵の湯」は、湯畑から徒歩3分程度の「地蔵広場」の一画にあります。周囲には「足湯」や源泉が湧き出る「小さな湯畑」、「目洗い地蔵堂」などがある静かな環境です。最近は「裏草津」としてカフェや庭園が整備されています。


千代の湯

施設概要
「千代の湯」は、観光客が入れる3つの共同浴場の中では最も小さい施設です。供給される温泉は湯畑源泉で、源泉温度55.7℃、強酸性でph2.1、透明なお湯です。湯舟は小さく2~3人しか入れません。壁は板張りですが床面は石張りで、石の冷たさが火照った体に気持ちいいです。地蔵の湯よりも温度が低いと感じましたので44~45℃くらいかなと思ったところ、温度計を見ると47℃の表示です。一番熱い白旗の湯が47℃くらいかと思っていましたが、もっと熱かったのかもしれません。


草津「伝統湯」
草津独特の入浴法として「伝統湯」という入浴方法があり、ここ千代の湯でのみ引き継がれています。写真の一般用湯舟とは別に専用の浴室があります。伝統湯の入浴作法は、①湯もみ板で湯もみし、②手桶で頭から30杯のお湯をかぶり、③湯長の号令で一斉入湯し3分間キープ、④湯長の号令で一斉に湯から出る、を一日4回繰り返すというものです。湯もみはお湯の温度を下げるとともに準備運動の効果があり、一斉入湯はお湯の揺れを一時期にまとめる効果があるそうです。明治時代に日本の温泉を世界に紹介したベルツ博士による医学的裏付けもされている健康入浴法です。
まとめ
草津温泉を楽しむ方法は、旅館やホテルの内湯、有料の日帰り温泉施設、無料の共同浴場の3種類がありますが、手加減なしの熱いお湯に出会うには共同浴場がいいかもしれません。地元の方に教わった熱いお湯の克服方法「湯もみ、湯が静まって、頭からかけ湯、湯から手を出す」は、草津「伝統湯」の入浴作法とも通じるところがあるようです。地元伝承の入浴方法で熱いお湯を克服してみてはいかがでしょう。くれぐれも無理はなさりませんように。
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