温泉、湯治とは?
日本人は古来湯船につかることにより、一日の汚れを落とす目的のみならず邪気を浄化し、意識的な「静」の時間をとることを大事な習慣としてきました。中でも「湯治」とは温泉地に長く滞在して体の自然治癒力により疾病の温泉療養をするほか、日常生活とは違う自然の中でのリフレッシュ効果、ストレス解消、免疫力向上、など心の健康を育むものです。病気になってから温泉を利用するのではなく、病気にならないように平素から温泉療養の「湯治」を行うとよいとされています。
全国の代表的な湯治温泉地
古くは大分県の別府温泉、群馬県の草津温泉などが「湯治場」として知られていました。日本湯治協会によると、現在有名な「湯治場」は次の通りです。
これはあくまでも代表的な湯治場温泉地です。環境省自然環境局によると、全国の温泉地の総数は2,983ヶ所。宿泊利用者数は年間1億3,000万人にもなるとのことです。
別府、鉄輪(かんなわ)温泉、湯治のひとり旅
日本一のお湯の湧出量を誇る「別府八湯」のなかでも、最も多く湯煙が立ち昇るのが「鉄輪(かんなわ)温泉」です。昔から湯治が盛んで、食材を温泉の蒸気で蒸す「地獄蒸し料理」で自炊しながらゆっくり過ごしたり、天然のサウナの「蒸し湯」でデトックスしたり。鉄輪の温泉が「高温の沸騰泉」だからできる、古来から伝わる「蒸し文化」を楽しめます。
鉄輪温泉の街中にはいたるところに共同浴場があります。鎌倉時代の建治2年(1276年)に一遍上人によって創設されたという「鉄輪蒸し湯」や、いろいろなお風呂がある「ひょうたん温泉」などはしっかりとした施設で、それなりの料金設定になっています。いっぽう地元の方々に愛され続けている数多くの共同浴場は風情があるとともに料金は驚くほどお安くなっています。地元の人が日々使っている共同浴場を巡るのも鉄輪温泉の魅力のひとつでしょう。
ちなみに、別府八湯全体として、「SPAPORT」(スパポート)なる温泉巡りのスタンプラリーの企画があって、八十八湯のスタンプを集めると「別府八湯温泉道名人」の称号が与えられるとか。筆者は今回10個のスタンプを集めましたので初段が認定されるそうです。
「地獄蒸し」料理
地獄蒸しの竈(かまど)には24時間強烈な蒸気が噴出し続けています。そこに丈夫な竹ざるに入れた食材を載せて蓋をして数分間蒸すだけです。やわらかい野菜は4分程度。硬いサトイモやカボチャでも15分。すごい蒸気ですので皮手袋の装着は必須。お借りした皮手袋も蒸気で焦げていました。
湯治宿での過ごし方
今回お邪魔になった湯治宿は普通の食事付きもあるようですけど、地獄蒸しの自炊を選択する方が多いのでしょうか、地獄蒸しの竈(かまど)の前で多くの方とお知り合いになりました。初日は横浜から来た男性と、京都から来た女性。どちらも一人旅で私と同じです。それぞれつかず離れず、適度な距離感で仲良くできたのは楽しかったです。記念に三人で写真に納まりました。
今回の湯治の旅は、ゆっくりすることが目的の一つでしたので、気ままに本を読んだりパソコンに向かったり、散策したり、そして温泉を楽しんだりしていました。6畳一間の貸間スタイルですけど窓際には縁側というんでしょうか板の間にソファも置いてあって、座る姿勢も変えられたりしてすごく快適でした。窓から眺める湯煙の朝焼けは冒頭の写真ですけど感動的に素敵でした。部屋の様子を写真でちょっと紹介します。
まとめ
今回の別府、鉄輪温泉湯治の旅は期待以上の満足感があって、また大黒屋さんを訪れたいなと思っています。最終日には別府駅周辺に一泊しまして、別府温泉の玄関的存在の竹瓦温泉を訪れました。風情たっぷり唐破風造りの温泉ですがすごい迫力です。高い天井で明るく歴史を感じる浴室、長い伝統を守ってきた受付の雰囲気やロビーに漂う独特の空気感など唯一無二の温泉施設だと感じました。別府八湯は長い歴史とともにそれぞれ特徴がある温泉地として栄えてきたのでしょう。筆者も毎年別府に通って「スパポート」のスタンプをどんどん集めていきたいと思います。