北海道東部の川湯温泉と、屈斜路湖周辺の野趣あふれる温泉群

川湯温泉 女湯 摩周湖タイル絵 温泉

「川湯温泉」は、北海道の東部の釧路からまっすぐ北に進んだ弟子屈町にあります。阿寒摩周国立公園内で東に摩周湖、西に屈斜路湖を望む大自然に囲まれた、硫黄の香りたちこめる温泉街です。大横綱「大鵬」の出身地であることでも知られ、大鵬相撲記念館で国民栄誉賞を受賞した大横綱の軌跡に触れることができます。

川湯温泉位置図
川湯温泉位置図
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川湯温泉「湯吉」

摩周湖の伏流水が、活火山「硫黄山」のマグマによって温められ、4km先の川湯温泉街まで流れてきています。源泉を持つ旅館も何軒かありますが、街中には公衆浴場の「湯吉」があり、賑わっていました。旧公衆浴場が老朽化で惜しまれつつ閉鎖しましたが、2年後の2024年に再整備して復活したものです。

川湯温泉、湯吉、外観
川湯温泉「湯吉」外観

源泉温度44.5℃、日本有数の「強酸性ph1.7、低張性のお湯です。微弱な黄色で、ほぼ透明、強酸味で硫化水素臭があります。

湯吉、男湯内観、硫黄山タイル絵
湯吉、男湯、硫黄山のタイル絵

公衆浴場「湯吉」を再建したオーナーは釧路市で左官業を営んでおり、施設の随所にタイルの意匠やタイル絵が施されています。男湯のタイル壁画は「硫黄山」、女湯のそれは「摩周湖」です。

諭吉、女湯、摩周湖タイル絵
湯吉、女湯、摩周湖のタイル絵

内装は民芸風の落ち着いた雰囲気で、「昭和のアイテム」や「アイヌ関連資料」が展示されています。

酸性のお湯は、古い角質を柔らかくして溶かす作用があり、肌の新陳代謝が促進され美肌効果が期待できます。また、高い殺菌効果があり皮膚の細菌やウイルスを抑制するため、皮膚疾患に効果を発揮します。一方、酸性のお湯は金属を溶かしますので、金属類を付けての入浴に関する注意書きが掲示されています。

諭吉、強酸性注意書き
湯吉、酸性湯、注意書き

酸性のお湯についての解説ポスターも掲示されていました。酸っぱい、金属を溶かす、古い角質を溶かしてお肌スベスベ、殺菌効果などなど。ちなみに、日本一の酸性泉は、「秋田玉川温泉」ph1.13です。以下順に、「山形蔵王温泉」ph1.5、「青森酸ヶ湯温泉」ph1.53、「群馬草津温泉」ph1.7ですので、川湯温泉は概ね草津温泉と同じくらいの酸性度です。

強酸性解説文
酸性湯の特徴、解説
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ペンション「ぱぴりお」温泉

日経新聞の夕刊に連載されているコラム「食あれば楽あり」で紹介されていた、ペンション「ぱぴりお」が気になって訪れてみました。コラムでは、おもに食事の評価が高かったのですが、その温泉の実力もなかなかなものです。

内湯

ペンションですが、内湯は男湯と女湯が別々にあって、屋外には露天風呂も作られています。源泉温度70.6℃、ph6.6の中性の優しい温泉です。無色透明、無味無臭、低張性温泉です。加水、加温、循環、濾過は一切せず、湯温42℃を目安に、供給するお湯の量と窓の開け閉めで調整しています。

ぱぴりお 内湯
ぱぴりお、男湯、内湯

「みそ樽」露天風呂

敷地の裏手のほうに、大きな「みそ樽」を再利用して露天風呂が作られています。丸太の小屋組みで囲んであり、屋根が架かり、三方は仮設の壁で囲われています。常時給湯されていますのでいつでも入れますが、男女共用なので貸し切り利用となります。

ホタテの湯

男湯の内風呂から外に出ると、金属製タンクを再利用した露天風呂が作られています。まるで二枚貝のような浴槽なので、「ホタテの湯」と名付けられています。

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屈斜路湖

屈斜路湖(くっしゃろこ)は、北海道東部に位置するカルデラ湖で、全域が阿寒摩周国立公園に含まれています。東方にある摩周湖とともに火山活動によりできた湖ですので、今でも湖周辺あるいは湖底から温泉が湧出しています。

砂湯

屈斜路湖東岸ほぼ中央付近にある砂湯は、湖岸を掘ればお湯が湧きだし、足湯を楽しむこともできます。駐車場やトイレ、土産物屋なども整備されていて、砂を掘るスコップやチェア、パラソルなども貸し出されていました。

砂湯 足湯
砂湯、スコップで掘った足湯

コタンの湯

砂湯から少し南に下ったところに、アイヌ民族資料館「コタン(=集落の意)」があり、その脇に露天風呂「コタンの湯」があります。屈斜路湖に面した石造りの湯船で、毎週金曜日には地元の方による清掃が行われます。男女別の脱衣所もありますが、湯船の中は大きな岩が男女を分けているだけなので混浴と同じです。またアプローチ路からも開放的で衆目の中での入浴となりますので、かなりの勇気が必要です。お風呂の湯面は湖面とほぼ同じ高さなので、湖と一体となった絶景露天風呂となり、多くの雑誌やテレビで取り上げられています。源泉の温度69.3℃、ph6.8、中性、無色透明、無味無臭、低張性。

和琴半島、大露天風呂

屈斜路湖の南岸に突き出た「和琴半島」は、豊かな森と散策路があり、サップやカヤックの乗り出し場やキャンプ場もあるレジャー拠点です。この半島の付け根にあるのが「大露天風呂」で、大きな三日月形の湯船は、底の玉砂利からお湯がこんこんと湧き出る野趣あふれる露天風呂です。脱衣所はあるものの完全な混浴で、周囲からの目隠しは全くありません。しかも湯面にはなにやら「藻」のようなものが浮いていて、入浴するにはかなりの勇気が必要です。せっかくですので足湯だけ楽しみましたが、かなり熱めのお湯の温度でした。源泉温度52.6℃、ph6.2、中性、無色透明、無味無臭、低張性。

露天風呂の湯面に浮いている「藻」のようなものの、正体が解説されていました。コケの一種で、阿寒湖の「マリモ」ならぬ、屈斜路湖の「マリゴケ」として文化財指定されているようです。

和琴半島 大露天風呂 マリゴケ解説文
マリゴケ説明看板
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まとめ

川湯温泉街一帯はph1.7~ph1.9の強酸性の温泉が有名ですが、そこから比較的近い屈斜路湖周辺の温泉は、ph6~7くらいの中性のお湯です。異なる性質のお湯と、「ぱぴりお」の楽しい露天風呂、屈斜路湖畔の野趣あふれる露天風呂が楽しい旅でした。