室町砂場の歴史
砂場の起源は豊臣秀吉の大阪城築城のころにさかのぼりますが、「室町砂場」は幕末に砂場本家の「糀町七丁目砂場藤吉」から暖簾分けを受けて1869年(明治2年)に日本橋本石町で「本石町砂場」として創業したのが始まりです。その後1932年(昭和7年)に町界変更により日本橋室町となり「室町砂場」として現在に至っています。1974年(昭和49年)には表通りから奥に引っ込み4階建のビルとなり、2008年(平成26年)には大規模な改修工事を行いましたが、昔ながらの風情が今も残っています。
外観
ビルになったとは言え、和の趣が豊かな外観です。ビルは4階建ですが店舗は1階と2階で、2階は予約制の懐石宴会用ので、掘りごたつとテーブル席があります。
1階 内観
内部はテーブルが置かれたフロアーと、座卓が置かれた小上がりで構成されています。奥の坪庭を囲むように、少し区画された離れの雰囲気があるテーブル席スペースもあります。
坪庭
店舗に入った一番奥には坪庭が設えてあります。四季を感じ光や風、時には雨模様を眺めるなど、屋内にいながら豊かな自然に触れることができます。
おつまみ(あさり)
「室町砂場」で一番好きなおつまみは「あさり」です。あさりの食感を残したまま醤油ベースで炊いてあり、甘すぎずあさりそのものの味を楽しめます。写真の赤色の小鉢は突き出しの梅クラゲです。
おつまみ(子持ち昆布)
ある時いつものように「あさり」を注文すると、突き出しで「子持ち昆布」が出てきました。子持ち昆布は産卵期のニシンが昆布に粘着性の強い卵を産み付けたもので、これをダシ醤油に付け込んだ一品です。プチプチとした食感とほどよい味付けに感動し、思わずお代わりをお願いしましたが残念ながらそれは叶いませんでした。これは店主こだわりの逸品だそうで、通常は2階の宴席用に仕込んでいるものですが、この時はたまたま1階のお客さんにも突き出しで提供されていたものでした。
おつまみ(タケノコと銀杏)
「室町砂場」は季節のおすすめメニューがあるのも楽しみのひとつです。お蕎麦そのものにも季節のメニューが登場しますが、季節のおつまみも豊富です。春の竹の子土佐煮や秋の揚げ銀杏などは秀逸です。
お蕎麦
お蕎麦は更科粉を使ったのど越しの良いせいろと、蕎麦の香り豊かなもりの二種類の用意があります。天せいろや天もりはの発祥の店といわれる室町砂場では、温かい汁にかき揚げが浸かって出てきます。もともとは熱い夏でも天ぷら蕎麦を美味しく食べやすく提供する工夫として考案されたものです。
おまけ
お会計の帳場には珍しくマッチが置かれていました。かわいい絵柄なので伺ってみると、なんと毎月絵柄が変わるそうです。これは竹の子と桜の花びらでしょうか、粋な計らいですね。
まとめ
室町砂場の魅力は、お蕎麦と一品料理の味が確かなことに加えて、昼から夜にかけて休みなしの通し営業だということも見逃せません。常にお客さんは何組か居て、ゆっくりとおそばを食べたり昼酒を楽しんだりしています。フロアー係の女性陣はみな制服姿の白いエプロン掛けで「いらっしゃーい」と独特の節回しで迎えてくれます。
1964年(昭和39年)に室町砂場の3代目の弟が赤坂に「赤坂砂場」を開店していますので、ぜひこちらも覗いてみてください。すこし小ぶりですが古い和風木造建屋の趣のあるお店です。
「砂場蕎麦」に関する別記事があります。ご興味のある方はお立ち寄りください。