嬉野温泉は、奈良時代の肥前風土記に「万人の病を治す温泉」と記述される1300年もの歴史がある温泉です。江戸時代には長崎街道の宿場町「嬉野宿」として栄えました。2022年には武雄温泉駅と長崎駅を結ぶ西九州新幹線が開業し、嬉野温泉駅も新設されましたので格段に利便性が向上しています。ちなみに博多駅と武雄温泉駅間はリレーかもめという連絡特急が走り、武雄温泉駅での対面乗り換え方式で運行されています。

和多屋別荘
嬉野温泉を代表する「和多屋別荘」は2万坪の広大な敷地を有し、その中央には嬉野川が流れます。黒川紀章が設計した「タワー棟」と、佐賀鍋島藩の別邸を移築した貴賓室と日本伝統の数寄屋造りの客室などからなる「水明荘」により構成されます。1987年(昭和62年)には全国植樹祭にご臨席された昭和天皇が宿泊されました。


温泉
嬉野温泉の湯は「日本三大美肌の湯」のひとつとされ、美肌に効果がある無色透明の弱アルカリ性の温泉です。和多屋別荘の源泉は、泉温72.9℃、微弱塩味、無臭、ph7.83です。ちなみに「三大美肌の湯」の残りふたつは、島根県「斐乃上温泉」と、栃木県「喜連川温泉」です。



図書室、茶房、ピエール・エルメ
和多屋別荘の大きな特徴のひとつが、広大な敷地と施設を生かした特別な空間の演出です。様々なテーマで取り揃えた約1万冊の書籍を自由に閲覧し購入もできる図書室・書店があり、知的好奇心が刺激されます。隣接する茶房では地元の嬉野茶のテイクアウトも可能ですので、ゆっくりとお茶を楽しみながらページをめくることもできます。ピエール・エルメのカフェとショップでは嬉野煎茶・嬉野ほうじ茶・嬉野玄米茶を用いたマカロンやケーキなど、この土地限定のメニューも楽しめます。
とても広い面積が図書室や茶房、カフェ、ショップなどに割かれている贅沢な空間です。非日常の演出とともに、日本の伝統や文化、地域の特産を大事にするコンセプトが伝わってきます。



アート
日本の伝統建築の侘び寂びや色彩を表現した空間、美術館を思わせるようなアート演出、廊下の角々に置かれる季節のモニュメントが目を愉しませてくれます。なかでも著名なランタン作家三上真輝氏による作品は、夜の闇に浮かぶとても幻想的なものでした。


嬉泉館
「嬉泉館」は嬉野温泉では数少ない自家源泉を有し、一切の循環をせず100%かけ流しで源泉が供給されています。源泉は高温のものを一晩かけて冷やし、水道水の加水は行われていません。湯は柔らかく、肌に優しい温泉を堪能できます。源泉温度83.5℃、ナトリウム塩化物泉、無色透明、無味無臭、低張性、弱アルカリ性、Ph8.3、若干熱めで柔らかく、とてもやさしいお湯でした。小ぶりな旅館は浴槽も小さくて済みますので、お湯の管理も行き届き源泉そのものの効能をじっくり味わうことが出来ます。


シーボルトの湯
嬉野温泉には江戸時代から続く「古湯温泉」と呼ばれる公衆浴場がありましたが、1996年(平成8年)に施設の老朽化等により一度は閉鎖されました。2010年(平成22年)に「古湯温泉」の面影を色濃く残す木造2階建ての「シーボルトの湯」が再建され、地元住民ならびに観光客に親しまれています。シーボルトは江戸時代に日本を訪れたドイツ人医師ですが、嬉野温泉を訪れて馴染みが深いことから名付けられました。源泉温度81.1℃、無色透明、微塩味、無臭、ph7.71、地元の人が多く利用されていて、とても盛況でした。2階には大広間の休憩所もあり、地域の集会所的な機能も有しているようでした。



湯豆腐
嬉野温泉では湯豆腐が有名で、街中には多くの湯豆腐屋さんがありますし、旅館でもだいたい湯豆腐が提供されます。なかでも「宗庵よこ長」は嬉野温泉の「温泉湯どうふ」発祥のお店として有名です。古来、嬉野温泉のお湯は胃腸に良いとされ、この温泉で豆腐を煮ると豆腐が溶け出し、湯が白濁してきます。濃厚豆腐が溶け出した豆腐本来の風味が活きた湯汁と、とろけるようになめらかな豆腐の食感が特徴です。「宗庵よこ長」の温泉湯どうふは、湯汁に味が付いているのでタレを付けずにそのまま食べます。寄せ豆腐のえびや肉、野菜等にはタレを付けます。漫画「美味しんぼ」でも紹介されている嬉野温泉の名物料理です。

まとめ
美肌の湯・嬉野温泉の神様として「豊玉姫神社」に祭られる豊玉姫様は、竜宮城の乙姫様でその肌はとても白くて美しく、また心優しい方だったそうです。豊玉姫様が傷ついた「なまず」を嬉野の温泉で治して以来、白く美しくなった「なまず」は豊玉姫様の使いとなっています。豊玉姫神社の本殿の脇には「なまず社」があり、「素肌健康」「しわ退散」「皮膚病退散」などを願いながら「なまず様」に聖水をかけるのが作法です。嬉野温泉は、「美肌の湯」「温泉湯豆腐」「なまず様の神力」のトリプル効果で美肌力アップは間違いなさそうです。
