華屋与兵衛を始祖とする江戸前寿司の源流に連なる店として最古の歴史を誇る吉野鮨は、1879年(明治12年)に屋台からスタートしました。日本橋高島屋の裏通りの繁華街にある店舗は鉄筋コンクリート造5階建のビルになっていますが、寿司は江戸前の仕事を守っています。そんな吉野鮨さんをご紹介いたします。
吉野鮨外観
![吉野鮨 外観](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/07/吉野鮨全景2-577x900.jpg)
鉄筋コンクリート造5階建、店舗は1、2階で3階以上は住居として使用しているようです。日本橋高島屋裏通りの繁華街ということで街並みに溶け込んだ自然な佇まいです。
![吉野鮨 外観 看板](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/07/吉野鮨看板-4-1-658x900.jpg)
内照式の袖看板ですがとても遠くから見えます。これなら迷わずお店にたどり着くことができそうです。
![吉野鮨 外観 英語看板](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/07/吉野鮨壁付英語看板-2-1-900x827.jpg)
何故か建物壁面に英語の壁付サインがありました。土地柄外国人の方も多いのでしょうか。それとも店主がハイカラを気取ってデザインしたのかもしれませんね。
吉野鮨内部
1階はカウンターのほか、4人掛けのテーブルが3卓、小上がりは掘りごたつ式に改修した4人掛けが2卓あり、わりと席数はあります。2階は3部屋で合計20名程度が入るそうで様々な会合に利用できるようになっています。最近は畳に直接座る方式だと利用が少ないため、すべての席をいす式に改修したそうです。
地元の常連のお客さんやサラリーマンの方々が気楽に使っている雰囲気で、いわゆる老舗感的なものは比較的薄いかなと感じました。
江戸前寿司の仕事
刺し身をお任せでお願いしたところ、白身はマコカレイ、マグロは赤身と中トロの二種、それとタコでした。吉野鮨はトロ握り発祥の地とも言われています。さすがに江戸前寿司源流の最古のお店ですね。
握りでいくつかお願いした中で特に美味しかったのは穴子です。強火で炙っているのですがその食感と温かさがとてもいい。イカは旬の白イカでこれもまた甘くておいしたったです。
もっと美味しいものありますか?とお訪ねして注文したのが煮ハマグリと新子(シンコ)。どちらも江戸前仕事の握りです。煮ハマグリはハマグリの旨みが煮ることによって凝縮され、噛めば噛むほど旨みが出てくる!飲み込むのがもったいないほど美味しかったです。新子は旬のわずかな期間しか市場に出回らない貴重品です。あまり時期が早いと仕入れ値が張るということで、たまたま訪問した日から仕入れはじめたそうです、運よく新子に巡り合えました。写真の新子は3尾で握っていますがすぐ大きくなって2尾で握るようになって、その後コハダに成長するそうです。わずか3週間くらいが新子の旬だといわれています。
![シンコ3枚での握り](https://inostage.blog/wp-content/uploads/2023/07/吉野鮨シンコ-2-750x900.jpg)
新子には煮切醤油が付けて提供されていますが、江戸前寿司ではほどんどの握りに煮切醤油が付けられているようです。煮切醤油とは醤油に酒とみりん、出汁を加えて煮ることによって作ります。塩分が薄く優しい旨みの煮切醤油は江戸前寿司には欠かせません。
まとめ
建物はビルになってお店の雰囲気も地域に溶け込んだ気取らない雰囲気になっていますが、江戸前寿司の仕事は丁寧に伝統を守っているようです。
江戸前寿司の仕事といわれる「〆る」「煮る」「炙る」などは、そもそも保存技術の発達していなかった時代の要請によるものでしたが、現在の吉野鮨五代目の店主は「素材の味を良くするため」に改めて積極的に活用することを再開したそうです。
江戸前握り寿司の始祖華屋与兵衛の流れを汲む中で最も古い歴史を持つ吉野鮨に一度訪れてみてはいかがでしょう。
江戸前寿司の伝統を守るお店の別記事があります。ご興味のある方はお立ち寄りください。