箱根湯本の天山湯治郷は55年以上の歴史を持つ日帰り温泉施設です。箱根湯本から奥湯本に向かう須雲川沿いの山間にあり「野天風呂で湯浴みをする湯治湯屋でありたい」とのコンセプトで造られた共同浴場です。湯治にこだわっているため大人数での来場をお断りし、おひとりでの来場が推奨されています。日帰りの湯治でもゆったり、のんびりできる、ゆとりの空間が提供されています。
天山湯治郷とは
コンセプト
茶の湯の野点に見立てて「野天風呂」と名づけた創業当初は、よしず張りの簡素な施設からスタートしました。箱根の豊かな自然の風景、天然のお湯の恵みを損なうことなく、ひとりでも多くの人と分かち合いたいとの思いで、野天での共同湯を理想としてきました。加えて祭りの日のような晴れやかさと心安らぐ空間を作るため、湯屋の設計や配置・デザインにもこだわり箱根の自然とも共存させています。
湯治には温泉の泉質とともにその鮮度を保つことが重要です。温泉に含まれる成分は、気圧、温度、時間の推移とともに変化します。温泉はまさに生きて呼吸しています。天山湯治郷では5ヵ所の源泉から日量49万リットルのお湯が湧出しており、泉温67℃の高温のお湯を水で薄めず自然放熱させて12ヵ所の湯船に供給しているため、温泉が持つ自然の癒しの力を十分に堪能することができます。
アクセス
箱根湯本駅からバスで10分の距離になります。駅前から旅館送迎バス「Bコース、早雲通り」か、路線バス4番乗り場「元箱根港または畑宿行」に乗って、奥湯本入口下車です。あまり通り慣れない道ですが、この道が旧東海道ということで旅情がこみ上げてきます。
天山 施設概要
外観、内観
バス停から道を下って須雲川を渡るとすぐに天山湯治郷です。門の手前に入湯札の自動販売機があって入湯券1,450円を買って入場です。和風門と老舗旅館のような入口で期待が高まります。
内部もセンス良く小綺麗にまとめられています。お土産のショップも上品です。
お風呂
野天風呂をコンセプトにしているだけあって、屋根がかかっている湯舟はあっても壁はなく外と一体です。泉温は吐出口近くのあつ湯で45℃くらい、ぬる湯で42℃くらいです。吐出口は何カ所かあり、各々フレッシュな源泉が供給されています。
写真にある屋根の付いた白い塗り壁のほこらは、窯風呂です。入ると両側に3人ずつ計6人の座る場所が間隔を開けて示されています。蒸気は源泉をそのままスチームにしているというこだわりです。
いくつかの源泉がありますが、泉温は65℃~70℃、水素イオン濃度はph7.9~ph8.6のアルカリ泉、泉質はアルカリ単純泉または塩化物泉です。
休憩室、読書室
日帰りの湯治でもゆったり、のんびりできる、ゆとりの空間を提供することをコンセプトにしているだけあって、仮眠が取れる休憩室や読書や思索に耽ることができる読書室が贅沢に用意されています。これら以外にも施設のあちこちに畳敷きの休憩コーナーが設けられていて、皆さん待ち合わせや仮眠で利用されていました。
レストラン
レストランは2店舗ありますが平日はどちらか1店舗がお休みとなります。1店舗は鰻と自然薯が名物の山法師、もう1店はしゃぶしゃぶが名物の楽天です。
楽天の店内は半個室席とテーブル席があって、メニューもしゃぶしゃぶだけでなく、うどんのセットなどもありました。
中庭
箱根の豊かな自然の風景を感じることができる空間として、中庭とそれに続く川沿いのテラスがあります。中庭では季節柄たき火が設えてあって、火を見てひとり寛いでいる方もおられました。飲食の持ち込みは禁止されていますが、飲み物の自動販売機は中庭にも館内にも置いてあります。アルコール飲料もありました。
貸し座敷 離れ雲
天山には「離れ雲」と呼ばれる貸し座敷が7室あり、そこを借りた人だけが入浴できる「奥の湯」が男女各ひとつずつあります。男湯は竹林に囲まれた野趣あふれる秘湯の雰囲気です。貸し座敷の料金は2時間3,900円。一人客のためのお得なプランですと4時間3,000円となっています。
その他の施設
かよい湯治 一休
同じ敷地内の別棟に「かよい湯治 一休」があります。こちらは別料金ですが平日に限り、天山から一休へのはしご湯券が300円で購入できます。通常は一休入場料1,200円です。
一休は脱衣所と湯舟があるだけで、風呂上りに寛ぐ休憩室もありません。ひたひたと溢れる温泉と目の前に広がる自然、流れ落ちる滝、眼下を流れる須雲川の四季折々の景色を堪能できます。
逗留湯治、羽衣
日帰り温泉の天山湯治郷ですが、宿泊できる「逗留湯治 羽衣」もあります。須雲川の河畔に建ち全8室の部屋貸しスタイル。3泊4日が基本で1泊のみは受け付けていません。滞在中は天山、一休で好きなだけ湯浴みできるほか、宿の中にも24時間利用可能な内風呂もあります。1泊8,000円で朝食込み。夕食は別途1,800円です。
姥子温泉、秀明館
場所はだいぶ離れているのですが、同じコンセプトの日帰り湯治場が天山湯治郷のパンフレットに紹介されています。おそらく同じ経営母体が運営されているのでしょう。
秀明館という日帰り温泉施設は、大涌谷から芦ノ湖に向かう途中の姥子にあり、小さな湯床という部屋か座敷を借りての入浴となります。一人当たりおおよそ2時間2,000円、4時間3,200円が目安です。
療養のための施設なので安眠の妨げになることや大人数での来館はご遠慮いただきたいとのことですし、食事の提供はなし、酒類の持ち込み禁止、とかなりストイックな湯治場です。
まとめ
箱根湯本の駅からバスでわずか10分の距離でありながら、箱根の豊かな自然を満喫できる日帰り湯治施設「天山湯治郷」。野天で共同湯、源泉かけ流しはお湯の新鮮さにもこだわるところが素晴らしい。湯治をコンセプトにして大人数お断りで、おひとり様を推奨するとともにゆったりと過ごせるようゆとりの施設が心を豊かにしてくれます。四季折々に訪れてみたいお気に入りの施設となりました。
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