ヨーロッパではホワイトアスパラガスは季節野菜の王様と言われ、春の食卓をにぎやかに彩ります。日本ではグリーンアスパラガスが主流ですが、ホワイトアスパラガスの魅力について少しお伝えいたしましょう。
アスパラガスとは
アスパラガスはヨーロッパが原産でローマ時代の紀元前2000年から栽培されていたとされる長い歴史を持つ野菜です。栽培方法の違いにより、日光に当てたグリーンアスパラガスと、日光を遮断して軟白にしたホワイトアスパラガスがありますが植物学的には同じ品種です。ホワイトアスパラガスはグリーンアスパラガスより青臭さがない分、味が洗練されていて甘さと苦みがほどよく同居しているのでヨーロッパでは人気の食材です。
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また、アスパラガスの正式名称は「アスパラガス・オフィシナリス」といいますが、オフィシナリスはラテン語で「薬用」の意味ですので薬効が期待されます。ホワイトアスパラガスにはサポニンという血液をサラサラにする成分と、アントシアニンという発がん予防効果の成分が含まれています。グリーンアスパラガスにはルチンという毛細血管を丈夫にする成分と、アスパラギン酸という疲労回復効果のある成分が含まれています。
ヨーロッパのホワイトアスパラガス
ヨーロッパでは春を告げる野菜として知られ、日本の「桜前線」のように「アスパラガス前線」として4月にスペインやイタリアから収穫が始まり、フランスからベルギーへ、オランダからドイツへとアスパラガス前線が北上していきます。特に春先の新芽は、根株に蓄えられた養分がたっぷり含まれており、追肥で出てくる夏の芽より糖度がはるかに高いとされ滋養食品として重宝されています。
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4月 イタリア産
4月になるとアスパラガスの王様といわれるイタリアヴェネト州バッサーノ産のホワイトアスパラガスが出荷され始めます。長さは18~20㎝、直径は1.1~2㎝、大きいものは3㎝にもなります。深さ15~20㎝の溝に40㎝間隔で植えられ、4年に一度の収穫となります。
地元バッサーノでの代表的な食べ方は、バッサーノ風卵ソースがけです。ソースの作り方は、フォークで卵を潰し、塩胡椒をかけ、スプーンでかき混ぜながら、オリーブオイルを入れます。ワインヴィネガーも味見をしながらお好みの量を加えます。
5月 ドイツ産
5月になるとドイツ産のホワイトアスパラガスが旬を迎えます。ドイツ中央部ニーダー・ザクセン州の北部には、ホワイトアスパラガスの生産地をめぐる750㎞にも及ぶ「シュパーゲル(アスパラガス)街道」というユニークな街道があります。シュパーゲルの淡くて繊細な味わいを引き立てるのが、卵と溶かしバターなどで作る「オランデーズソース」。塩とレモンでゆでたシュパーゲルにオランデーズソースをかけるのが、最もオーソドックスな食べ方です。
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日本で食べるホワイトアスパラガス
春になると国産のホワイトアスパラガスも店頭に並びますが、やはり本場ヨーロッパのそれには長さや太さ、食感と味の面でかないません。空輸されたホワイトアスパラガスは主にレストランに卸されますので、外食で楽しみましょう。
イル カルディナーレ
「街外れの小さなイタリア料理店」をコンセプトにトスカーナ料理を中心としたイタリアの郷土料理を提供しているお店です。春になるとヨーロッパからホワイトアスパラガスを空輸して「ホワイトアスパラガスフェア」を開催します。イタリアで、ホワイトアスパラガスに合わせる定番のヴェネト州の珍しい品種の白ワインを用意するなど、ホワイトアスパラガス愛にあふれたお店です。
料理
店内
銀座SIXの中にあるカジュアルな雰囲気のお店です。
テーブルマットと取り皿
お店が提供する郷土料理を育むトスカーナ州は、イタリアの中部に位置し州都はフィレンツェです。イタリア・ルネッサンスの中心地であったフィレンツェをはじめ、ピサ、シエーナなど多くの古都があり、文化遺産や自然景観に恵まれた地域です。
ツム アインホルン
ツム アインホルンは、伝統的なドイツ料理を提供し、ドイツ人を招待できる店としての評価を得ています。同じビルにはメルセデス・ベンツ・ジャパンのオフィスが入居しており、資本的にも繋がりがあるそうです。春のホワイトアスパラガスの料理の人気は高く、毎年多くの著名人が訪れているようです。
まとめ
ヨーロッパに暮らした経験のある人の話には、必ず春のホワイトアスパラガスが登場してきます。日本の桜前線や、秋のサンマなどと同じく季節感や旬の食材の代表格として人々の心に根付いているのでしょう。日本産のホワイトアスパラガスもおいしいですが、太く立派な輸入物のホワイトアスパラガスはお店でしか味わえません。空輸されて、腕に自慢のシェフが調理したホワイトアスパラガスは、ほぼヨーロッパのそれと変わらずおいしくいただけると思います。春だけの楽しみですので皆さんお出かけになってはいかがでしょう。