「雷」や「台風」のエネルギーは、利用できないのか

落雷の写真 趣味

気候変動対策とエネルギー安定供給は、世界の二大課題といわれています。東日本大震災における原子力発電所事故以来、再生可能エネルギーへの取り組みが進んでいるものの、なかなか安定したエネルギー源とはなっていません。何か新しいアイデアとか取り組みはないのでしょうか。

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発電方式の歴史と将来性

発電方式の歴史は「水力」「火力」から始まり、「原子力」「再生可能エネルギー」へと大きく変遷してきています。今後は脱炭素の流れの中で、再生可能エネルギーといわれる「水力」「風力」「太陽光」「地熱」「バイオマス」などのほか、次世代型の「水素発電」や「宇宙太陽光発電」「潮力発電」などが増えていくのでしょう。「宇宙太陽光発電」はそれなりに「派手な新技術」の香りがしますが、それ以外は(言っては失礼ですが)何となく地味な印象です。地球温暖化で増えている「落雷の莫大なエネルギー」を活用したり、年々大型化している「台風の破壊的なエネルギー」を発電に利用することはできないのでしょうか。それぞれの実現の可能性や研究の現状を考察してみました。

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落雷の発電利用

「雷」は自然の放電現象で、1回の落雷を仮に電圧を1億ボルト、電流を20万アンペアとすると、そのエネルギー量は200億キロワットになります。東京電力の1日の電力供給量は4000万キロワット程度ですので、単純計算で1.3年分となりますので、新エネルギーとして期待も膨らみますが、この実現は難しそうです。一般的に実現できないとされる理由は以下の通りです。まず、超高電圧すぎて普通のバッテリーでは受け止めることが出来ないこと。次に、雷電流は瞬間的でおよそ1万分の1秒しか続かないので、発電機を回すには短すぎること。そして、いつどこで起こるかわからないので、事前に準備しておくことが出来ないこと。というものです。

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台風による風力発電

台風の風の力を利用した発電はどうでしょう。風力発電は、風況が安定したヨーロッパでは「プロペラ式風力発電」が盛んですし、最近では日本でも増えてきています。しかし、「プロペラ式風力発電機」は、強風による暴走事故や故障発生のリスクがあるため、台風襲来時には運用を停止しています。大型の台風一つのエネルギーは、国土交通省の試算によると、日本の総発電量の約50年分にも相当すると言いますので、非常にもったいない話です。

しかし、「台風による風力発電」にはひとつの光明が射しています。株式会社チャレナジーが開発した「垂直軸型マグナス風力発電機」は、プロペラではなく円筒が気流中で自転したときに発生する「マグナス力」により発電する新しい風力発電機で、理論上は台風のような強風や乱流時にも発電することが出来ます。加えてプロペラ式と比べて、安全性の向上、低コスト化、静音化の実現が期待されます。

垂直軸型マグナス風力発電機 図解
垂直軸型マグナス風力発電機 図解
垂直軸型マグナス風力発電機 実機の写真
垂直軸型マグナス風力発電機 実機

さらに台風発電については別のアプローチもあります。内閣府が主導する「タイフーンショット構想」は、台風を人工的に制御し、その一部を再生可能エネルギーへ転換する構想です。全長約300mの無人船が台風の進路に自律航行し、巨大な帆で台風の風力を推進力へ変換します。帆による推進力で船体が進み、船底に搭載された直径30m級水中プロペラが海水をかき分けて発電します。1隻あたり数百万kW級の発電能力が試算されており、年間20個の台風を5日間追尾する運用なら、1隻当たり年間33億kWh以上の発電が可能とされています。日本の年間総発電量は約1兆kWhなので、100隻規模の船団を運用すれば国内全電力の数%を台風発電船で賄う構想も現実味を帯びています。

台風発電船のイメージイラスト
台風発電船イメージ
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技術進歩

大馬糞危機

「1894年の大馬糞危機」という話があります。1894年にアメリカのタイム誌が「50年後にはロンドンの全ての通りが9フィート(約2.7メートル)の馬糞に埋もれてしまう」という予測を報道したことに由来します。

当時のロンドンには約5万頭の馬がおり、これらの馬が1日に約57万キログラムの馬糞と5万7千リットルの尿を排出します。この膨大な排泄物が街中に悪臭を放ち、雨が降ると水分で悪臭が強まり、衛生面でも深刻な問題となっていました。解決策がなかなか見つかりませんでしたが、蒸気自動車や自動車の発明と普及により「大馬糞危機」は、あっけなく解決されました。つまり、巨大で一見解決困難な大問題でも「人間の創造性」と「技術革新」によって克服できますし、「膠着した視点」で問題を捉えないことの大切さを伝えています。

大馬糞危機、馬糞に埋もれるストリートの写真
馬糞に埋もれるストリート

NTT宇宙環境エネルギー研究所

NTT宇宙環境エネルギー研究所は、地球環境の再生と持続可能な社会の実現に向けた革新的技術の創出を目的に、2020年に設立された新しい研究所です。再生可能エネルギーの研究や自然災害、台風の力を利用した発電などのほか、一般に無理とされている「落雷のエネルギー」に関連する研究にも取り組んでいます。落雷エリアを高精度に予測し、ドローンに落雷させる「雷制御技術」,雷エネルギーを蓄える「雷充電技術」、雷が落ちる前にエネルギーを吸収する「浮遊型雷エネルギー吸収システム」、などの研究を行っています。

NTT宇宙環境エネルギー研究所

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まとめ

技術的に素人の人間が、思い付きで「雷のエネルギー」や「台風の力」を活用できないかと空想してみたところ、「台風」はもとより「雷」利用の研究も、すでに研究者の方々や事業家の方々が積極的に取り組んでおられました。日常的に「エネルギー問題」が深刻な課題として話題に上りますが、もしかすると「大馬糞危機」のように「技術の進歩」で容易に解決される杞憂なのかもしれません。