二葉鮨は、明治10年創業で江戸前寿司の源流のひとつとされています。現在も東京東銀座で営業をしていますが、その建物は1951年(昭和26年)に戦後の復興で建築されたものです。建物の外観も内観もすごく年季の入った雰囲気で、お寿司は大変手の込んだものを美味しくいただきました。
外観
切妻造りの瓦屋根、1階2階の出桁で支えた軒は銅板葺き、1階の出窓の軒は板張りです。木部はかなり傷んでますが、入口まわりの欄間の意匠は凝った造りです。出窓部分のカウンターは、おそらくここから街ゆく人にお寿司を提供していたのでしょう。
入り口にかかる暖簾の一文字は「握」だそうです。店内にかかる額に「あな楽志(たのし)ひと握(にぎり)三千世界 【運関 書】」とありましたその「握」の文字を暖簾に染め抜いたそうです。先々代が知り合いのお坊さんに揮毫してもらったそうで、オリジナルが店内に掲げられていました。
軒は出桁で支えられています。木製の店看板はいつから使われているのでしょう、かなりの歴史を感じます。
広くはない店先にも、立派な灯篭がありました。置き石や植木など店先に自然と四季を誂えるのは、日本人の感性に馴染みます。
内部
レイアウト
入り口に風除室があり、その奥行き分の左側手前に4~6人用のテーブルがひとつ置かれています。正面通路の右側に4人掛けのテーブルがふたつあり、通路左側に丸みを帯びたL型のカウンターがあってここに9席。客席は以上となります。
床、壁、天井
床はモルタルに玉石や大判の切株をランダムに埋め込んだ黒を基調とした落ち着いた雰囲気です。天井は船底天井で、壁には細工の込んだ障子の建具や硝子建具、下がり壁と丸太の落とし掛け、磨がき丸太の柱など和風の雰囲気満載です。板場の後ろの壁の上部にはお寿司を出すための大きなお皿がいくつも飾ってあり、季節のアジサイの絵がさりげなく掛かっています。店内の古い大きな掛け時計は10分進んでいて終電を逃さない配慮だとか、店舗内にも様々な気配りが感じられました。
窓ガラス
これは外から撮った写真ですが、一番左の1枚だけが他の3枚と違います。おそらく右の3枚は割れてしまったのでしょう。一番左のガラスを中から見ますと、そのわずかな透明の縁取りから外の雰囲気が驚くほどよく伝わってきます。風に揺れる暖簾はもちろん、街ゆく人の往来なども、はっきりではないけど明らかに感じます。右の3枚の縁取りがない全面擦りガラスですと、外の雰囲気は伝わらず、外と内は完全に分断されてしまっています。こんなガラスは、今では手に入らないんでしょうか、残念です。
お寿司
ランチの握りを頂きました。マグロ、スズキ、甘えび、アジ、青柳、鉄火巻、かんぴょう巻、穴子、玉子焼、でひと通りです。これにウニと車エビを追加でお願いしました。噂にたがわずネタはもちろんシャリもガリも大変美味しかったです。お酒も冷やを頂きましたら「加茂鶴ゴールド大吟醸」でした。初めてでしたけど、このお酒には金粉の桜の花びらが二輪入っているんですね、なんだかうれしくなりました。
まとめ
江戸前寿司の源流とされる「二葉鮨」「喜寿司」「吉野鮨」のうちのひとつであり、その丁寧な仕事ぶりは今も多くのファンを魅了しています。歴史を凝縮した建物の中で頂くお寿司は、味覚のみならず五感にも感動を与えてくれます。予約が可能ですので、ご都合の良いときにお邪魔してみてはいかがでしょう。
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