伊東温泉は首都圏からも近く、古くから多くの人に親しまれてきました。日本三大温泉地としての実力と、伊東温泉を愛した東郷平八郎の痕跡を探ってみましょう。
伊東温泉は日本三大温泉
伊東温泉の温泉組合のHPによると伊東温泉は、別府温泉(大分県)、湯布院温泉(大分県)、と並んで日本三大温泉のひとつだそうです。近くには熱海や箱根などの温泉地がありますし、ほかにも草津温泉や下呂温泉、有馬温泉、道後温泉などの有名温泉地も多くあります。伊東温泉がこれらのライバルを抑えて3本の指に入るということですので、少し調べてみましたが納得の結果となりました。
源泉数
源泉数は別府温泉が圧倒的な1位ですが、伊東温泉も3位に食い込んでいます。源泉が多いということは敷地内から湧出している場合が多いということですので、配管を経由しての供給とは異なりフレッシュな温泉を楽しむことができます。また、源泉ごとの個性の違いを楽しむこともできます。
- 1位 別府温泉(大分) 2217 カ所
- 2位 湯布院温泉(大分)879
- 3位 伊東温泉(静岡) 649
- 4位 熱海温泉(静岡) 522
- 5位 指宿温泉(鹿児島)452
湧出量
伊東温泉の湧出量は毎分約34,000㍑で、3位は奥飛騨温泉に譲りましたが草津を抑えての堂々の4位です。湧出量が多いということは源泉をかけ流しにして贅沢に利用することもできますので、温泉地らしい豊かな風情を堪能することができます。
- 1位 別府温泉(大分) 83,058 ㍑/分
- 2位 湯布院温泉(大分) 44,486
- 3位 奥飛騨温泉郷(岐阜)36,904
- 4位 伊東温泉(静岡) 34,081
- 5位 草津温泉(群馬) 32,300
泉質
伊東温泉の泉質は、単純泉で弱食塩泉です。単純泉は、さらりと肌に優しいお湯ですので体に対する刺激が低く、乳幼児や高齢者の方にも優しく、外傷や病後の回復期などに適しています。
草津温泉などは強酸性で刺激が強く、鉄が溶けるほどの激しさです。それぞれの体質や体調に合わせて泉質を選ぶとよいと思います。草津温泉の記事と泉質についての記事がありますので、ご興味のある方はお立ち寄りください。
歴史
伊東温泉の歴史は古く、発見されたのは平安時代で、江戸時代には3代将軍・徳川家光に湯治湯として献上された実績もあります。昔から湯治場として愛されてきて、多くの文人墨客や芸術家が訪れ、四季それぞれの風物や人情を感性豊かに描き、数々の名作も残されています。
立地
伊東温泉は、天城山系を背に相模湾に向かって開け、海からも山からも自然の恵みを得ることができる豊かな立地です。海には伊豆最大の伊東港をはじめとする数々の漁港があり、朝夕新鮮な魚が水揚げされています。山からは温暖な気候を活かしたミカン畑をはじめ、ワサビ、シイタケなど、様々な農作物が収穫されています。 新鮮な食材に恵まれた伊東温泉は、旬の料理を気軽に楽しむことができます。
健身湯
現在の「ラフォーレ伊東 湯の庭」の温泉は、かつての「東京館」の「健身湯」を引き継いでいます。健身湯の泉質は単純温泉、弱アルカリ性、Ph7.9、低張性で、泉温は30.6℃、無色透明で無味無臭の万人に優しい温泉です。
東京館
明治から大正にかけて南洋で広く商売をしていた豊島石五郎氏がオーナーの東京館に、東郷平八郎がたびたび訪れていました。逗留を重ねる東郷平八郎が東京館に授けた名前が「健身湯」です。
東郷平八郎
東郷平八郎とは、明治時代の日本海軍の指揮官として日清及び日露戦争の勝利に大きく貢献し、日本の国際的地位を大きく引き上げた人物です。日露戦争においては、連合艦隊を率いて日本海海戦で当時世界屈指の力を誇ったロシアのバルチック艦隊を一方的に破ったことにより世界の注目を集め、その名が広く知られることになりました。
東郷平八郎と連合艦隊旗艦「三笠」の記事があります。ご興味のある方はお立ち寄りください。
湯上りラウンジ
大浴場を出たところに、小綺麗で落ち着いた雰囲気の湯上りラウンジがあります。そこに東郷平八郎由来の書や写真、愛用の火鉢や煙草盆などが展示されています。
「健身湯」看板
東郷平八郎が揮ごうした「健身湯」の看板が掲げられています。「甲寅 春」とありますので、1914年(大正3年)東郷平八郎66歳の時の揮ごうです。
東郷平八郎の書
白鶴帰来海月凉(はくかくかえりきたりかいげつすずし)-空に白い鶴が帰ってきて、海面に浮かぶ月の姿はいかにも涼しい風情である
水色山光引興長(すいしょくさんこうきょうをひくことながし)ー目に見える海や山の景色に、興味はいつまでも尽きないことだ
至誠(しせい)ーこの上なく誠実なまごころを表し、これをもって接すればどんな人でも動かせる力があるとし、幕末の志士吉田松陰が大事にしたと言われています。
ラフォーレ伊東 湯の庭
東京館はモダンなリゾートホテル「ラフォーレ伊東 湯の庭」に生まれ変わっています。ラフォーレ倶楽部という法人会員制リゾート施設ですが、一般のお客さんも宿泊可能ですし、日帰りの温泉利用も可能です。
外観
伊東駅から徒歩8分です。伊東の街は落ち着いた雰囲気で、松川沿いの遊歩道や商店街、東海館などの歴史建築もあり、散策が楽しい街です。
内観
開放的で明るいフロントロビーです。玄関を入って右手はガラス張りで、その先は水盤の中庭です。
中庭の池には大きな鯉が泳いでいます。足湯を楽しもうと池の淵に出てみると、エサを求めて鯉が近寄ってきます。
エレベーターホールの脇はガラス張りになっていて、その先は和風の坪庭です。館内のいたるところがセンス良く飾り付けされています。
客室
客室は和モダンがベースで、客室に温泉浴槽が設けられている部屋もあります。
まとめ
伊豆地方の温泉といえば熱海の人気が高いようですが、伊東温泉は温泉の源泉数、湧出量、泉質で日本有数の実力を備えるほか、歴史やその立地で多くの人たちに親しまれてきています。中でもラフォーレ伊東にある「健身湯」は東郷平八郎が親しみ、命名したことが確かな温泉ですので歴史ファンにとっても貴重な温泉です。伊東の街には、「東郷平八郎記念館(別荘跡)」「東海館(温泉宿跡)」「木下杢太郎記念館(生家と土蔵)」などの歴史建築も多く残り、ゆっくりと散策を楽しめる落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
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