かつて温泉旅館であった「東海館」は、オーナーが材木商であることから銘木や職人技が際立つ建物です。1997年(平成9年)に旅館としての営業を終了し、建物が伊東市に寄贈されました。約3億円かけて保存修復工事を行い、2001年(平成13年)に伊東市の「文化財施設」として公開しています。土日祝に限り日帰りの温泉入浴も可能です。
東海館とは
「東海館」は1928年(昭和3年)東海道線が熱海まで開通した年に、材木商の稲葉安太郎が創業しました。1938年(昭和13年)に伊東線が延伸され団体客などの客数が増加し、施設の増築と望楼の建築が行われました。増築にあたっては、3人の棟梁に各階を担当させて技を競わせるなど、贅沢と技を極めた建物となっています。
外観
正面
木造3階建で、平面的には長手方向にふたつの中庭を囲むように、ロの字がふたつ並んだ形状です。その後、4階部分に望楼が増築され、外観的にも特徴あるフォルムとなりました。


玄関
昭和初期の温泉情緒が漂う風格のある唐破風の玄関です。懸魚(げぎょ)には朝日と鶴の彫刻が施されています。

川沿い
裏手は松川に面しており、各階縁側から川面を眺めることができます。一方、松川沿いの遊歩道からは、堂々とした木造建物の美しい全景を鑑賞することができます。

夜景
夜間は室内の照明が灯され、外観もライトアップされているので美しさが際立ちます。川面に映る東海館を見ていると、かつての繁栄時の宴席の賑わいが聞こえてくるかのようです。


竹あかり
伊東温泉「竹あかり」が、松川沿いの遊歩道に灯されます。東海館の前から上流の音無神社までの遊歩道に、数々の竹あかりが美しく夜道を彩ります。近年里山では林業従事者の高齢化と後継者不足のため、竹林の荒廃が急速に進んでいるそうです。これに対する問題意識から始まった地域活動です。

内装
玄関、受付
玄関を入ると正面に中庭があり明るく開放的な雰囲気です。入場料は200円で、順路に従い館内を自由に見学するのですが、要所要所に説明書きがあり迷いません。また、伊東の歴史や伊東ゆかりの人物の紹介などもあり、なかなかの見ごたえのある展示でした。見学するのに、しっかりと1時間はかかりました。

温泉
大小二つのお風呂があり、土日祝に限り男女入れ替えで営業しています。入浴料は500円です。

中庭
中庭には各地の名石なども配されています。ロの字型にふたつある中庭が、明り取りとなって木造3階建ての建物全体を明るくしています。

書院
客室は書院造を基本としていますが、その格式はさまざまなバリエーションに富んでいます。
遊びごころ
欄の間。「平書院」(略式書院)ですが、床の間にはビャクシンの変木を用いた遊び心溢れる意匠です。障子には富士山と帆掛け舟・松の彫刻があしらわれています。

真の構え
葵の間。床の間の形状は決まりに基づいて造られた「真の構え」です。床柱は黒檀、床板は欅の一枚板です。付け書院で縁側部分に張り出しており、書院障子は幾何学文様の組子細工、欄間は鳳凰の透かし彫りです。


行の構え
牡丹の間。床の間は、やや崩した「行の構え」といわれています。床柱は杉の絞り丸太です。付け書院の障子の組子細工は魚を獲るための投網がデザインされています。


草の構え
孔雀の間。床の間のつくりは、自由で閑寂な「草の構え」といわれています。床柱には桜の皮つき丸太が使われています。付け書院の組子細工は幾何学模様のデザインです。


飾り窓
廊下に面した飾り窓には、それぞれ特徴あるデザインが施されています。それぞれの棟梁のセンスと工夫・匠の技が光ります。



廊下
中庭に面して廊下を巡らせ、たっぷりの光が差し込みます。廊下に面して各部屋の入口は雁行しており、妻面から入るように配置されています。


部屋入口
各部屋の入り口には、変木がデザインされ、足元は飛び石を模した切り株が配されています。入口部分や脇の変木の上には庇が掛けられています。


大広間
3階にある120畳の大広間です。下の2枚の写真は、大広間の二間に分かれる中央部分から、上手方向と下手方向をそれぞれ見たものです。格天井の重厚感のある大広間です。


二間続きを通しで見た写真です。かなりの大宴会を行うことができる広さです。温泉地なので芸者さんを呼んでの宴会があったのでしょう、ご丁寧に芸者衆のマネキンもありました。

望楼
1949年(昭和24年)には望楼が増築され、天城山から相模湾まで素晴らしい眺望を誇ったそうです。現在でも脇を流れる松川を見下ろすほか、建物の向こうにわずかに駿河湾を望むことができます。



まとめ
川沿いに建つ望楼を持つ堂々とした木造建築ですので、迫力満点です。館内に入ると美しい格子や欄間細工、畳敷きの廊下や障子の光が印象的で、日本建築のすばらしさを感じます。銘木と棟梁が競った技の数々を是非ご鑑賞ください。
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