北海道には多くの温泉地がありますが、札幌から1時間半と便利な登別温泉は北海道で一番の温泉地と言ってもいいかもしれません。豊富な湯量と泉質に恵まれ、泉質は全11種類のうち9種類の泉質の源泉が湧き出し「温泉のデパート」とも言われています。
一方、カルルス温泉郷は、登別温泉からさらにバスで10分の小さな温泉郷です。昔から薬湯として知られ、国民保養温泉地にも指定されています。
登別広域マップ
新千歳空港から南西方向にある室蘭の手前に「登別」はあります。札幌や新千歳空港から函館に向かう途中に立ち寄る観光客も多いようです。地名の語源はアイヌ語の「ヌプル・ペツ」(水色の濃い川)に由来しています。
登別温泉
JR登別駅からバスで約15分で登別温泉バスターミナルに到着します。国内でも有数の人気を誇る登別温泉です。なんといっても、9種類ものバラエティー豊かな泉質の温泉が楽しめるのが魅力ですので、旅館やホテルなどでそれぞれに趣向を凝らした湯船で湯めぐりをするのもいいでしょう。
周辺散策
マップ
登別温泉の街の中心部には大きなホテルや旅館が立ち並び、飲食店やお土産屋さんが街並みを形成しています。街の北側には、地獄谷や大湯沼、天然の川の足湯があり徒歩圏で楽しむことができます。また、街の東側には、ロープウエイで行くクマ牧場もあります。
地獄谷
約1万年前の日和山の噴火活動によってできた爆裂火口跡です。直径約450mで面積は約11haあり、甲子園球場約2.8個分もの広さがあります。硫黄の香りが立ち込め、現在でも熱湯を噴出する地獄谷にはたくさんの噴気孔や湧出口がありますが、遊歩道が整備されているので、奇怪な光景を間近に見ることができます。
地獄谷周辺の地面は熱くなっているところもあるので、観光客に注意を促す看板が掲示されています。
大湯沼
大湯沼はいわば大きな露天風呂みたいなものです。地中から毎分約1000リットルの硫黄泉が湧き出し、泉温は深いところでは約130℃で、表面でも約40〜50℃はあります。このような大規模な湯の沼は世界的にもめずらしく、学術的にも貴重なものとされています。だいぶ離れたところでも強い硫黄の臭いが漂ってきます。
奥の湯
奥の湯は、日和山の爆裂火口跡の一部で約80℃の硫化水素泉が湧き出し、蒸気が立ち上っています。成分自体は大湯沼と同じですが、硫黄は底に蓄積せずに流出しているため、湖水の色が鮮やかです。
足湯
大湯沼から流れ出した温泉が大湯沼川に流れ込み、天然の川の足湯となっています。下の車道から足湯を経由して、大湯沼まで遊歩道が整備されているので、手軽に自然を満喫しながら散策することができます。
カルルス温泉郷
カルルス温泉とは
カルルス温泉は、登別温泉からさらにバスで15分のところにある小さな温泉郷です。大昔からアイヌの人々のあいだで薬湯として知られていました。ラジウムを多量に含有する泉質は、生体を活性化するイオン化作用が強く、血液や細胞に作用して新陳代謝を促進し、神経痛などの病気に対しても効能があるとされます。万病に効く温泉として、昔から人気がある温泉です。名前の由来は、泉質が似ている世界的に有名な温泉地のチェコのカルルスバードに因んで「カルルス」と名付けられました。
鈴木旅館
1899(明治32)年にカルルス温泉までの道路を開設し、旅館一軒と浴場一棟が開業しました。 その旅館「寿館」が現在の鈴木旅館の前身です。カルルス温泉郷の源泉は、鈴木旅館の敷地内に湧出しており、ここから各所に配湯されています。
鈴木旅館には昔の写真がいくつか飾ってありました。2階が増築されたころの写真で、登別温泉の第一滝本館の従業員が宴会を楽しんでいる様子です。「第一」の前掛けと、サッポロビールの星マークのビール瓶が見えます。
内観
鈴木旅館は、増築や改修を重ねている歴史ある建物ですが、内装はきれいに改修されていて清潔感がありました。トイレと洗面所は共同ですが、こちらもきれいに改修されています。湯治宿によくある貸し間スタイルの旅館です。
温泉
カルルス温泉は、ラジウムが豊富で温泉の効果が充分期待され、かつ健全な温泉地としての条件を備えているということで、1957年(昭和32年)に「国民保養温泉地」に指定されました。その温泉は、無色透明、無味無臭、ph7.4の中性、泉温48℃、低張性の泉質です。とても柔らかく、体に馴染み、かつ浸透してくる名泉です。
湯舟は3つあり、源泉100%のあつ湯、5~10%の湧水を加水した中温、10~30%の湧水を加水したぬる湯の3種類が用意されています。あつ湯は源泉の46℃近い温度があったと思います。久しぶりに手加減なしのあつ湯を堪能しました。熱いお湯に入るコツとして、以前草津温泉で地元の人に教わった「手のひらを湯の上に出す」「浸かったら体を動かさない」を実践して、あつ湯を楽しみました。
鈴木旅館の面白いところは、「寝湯」ができることです。浴槽の周りが板敷きになっていて、ここに木の枕を使って横になります。体にタオルを掛けてそこにお湯を注いで、緩やかな温浴を楽しむというものです。のぼせることなく、温浴をしたい体の部分を中心に長時間湯浴みができますので、湯治客にも人気のようです。
食事
旅館の周辺には何もない場所ですので、一泊二食のプランです。旬の山菜や新鮮な海の幸を使った料理は、華美にならないスタンダードなもので、味付けは濃すぎず優しいものでした。お米も大変美味しく、夕食時はお櫃を空にしてしまいました。
バス
路線バスは1日5便程度あったのですが、このたび廃止が決定したようです。鈴木旅館のご主人もこれからどうなるかは、まだ決まってないとおしゃってました。タクシーの営業圏内ではあるので、営業妨害になるようなことはできないし、と思案顔でした。ちなみにバスだと500円でしたが、タクシーだと2,500円ぐらいになるそうです。
まとめ
登別温泉は全国的に有名で、大きな旅館やホテル、街並みも整備されています。地獄谷やクマ牧場などの観光施設もありますので、訪れた方も多いのではないでしょうか。一方、さらにその先のカルルス温泉郷は、元は4軒の小さな温泉郷ながら、その薬効でその名は全国に知れ渡っています。
鈴木旅館さんは現在も湯治客の受け入れをしていて、7泊以上でしたら1泊あたり3食付きで6,120円という安さで滞在することができます。自然豊かな静かな環境の中で、ゆっくりと湯に浸かり体を休めてみてはいかがでしょう。
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