花巻温泉郷はJR花巻駅から山に向かう道沿いに温泉が点在しています。道から豊沢川に向かって少し下ったところに、一軒宿の大沢温泉があります。近代和風旅館の旅館部山水閣、200年以上前に建てられた自炊部湯治屋、展示ギャラリーの菊水館により構成されています。
川に寄り添う混浴露天風呂の大沢の湯と、自炊ができる湯治屋にお邪魔してきましたので、ご紹介いたしましょう。
湯治屋外観
築200年以上の木造の建物です。増築を重ねており、本館、新館、中館、上館と建物が広がっています。
湯治屋、3つの温泉
大沢温泉の源泉はひとつで、ph9.0のアルカリ性、源泉温度51.2℃の高温泉、低張性の単純泉です。
大沢の湯
豊沢川にせり出すように設けられた露天風呂です。川のせせらぎと山の景色、流れる風に気持ちが洗われます。
すぐ目の前には、対岸の菊水館に渡る曲がり橋が掛けられており、露天風呂はほぼ丸見えです。上の写真は橋の上から撮ったものです。
露天風呂に入って左に目を転じますと、川と山、大きな空が目の前に広がります。樹々の合間から対岸の菊水館の茅葺屋根を見ることができます。
右の棚が男性用の脱衣スペースで、女性は正面の扉から入ったのち、左の暖簾の部屋で脱衣することができます。滞在中に2度ほどご婦人が入られていました。湯浴み着を着用しての入浴は、衣類クリーニングの油が川に流れ出る恐れがあるため、保健所の指導で実施できないそうです。20時から21時はご婦人専用の時間帯とされていました。
薬師の湯
タイル張りのレトロな雰囲気の内風呂です。入って左のあつ湯と、右のぬる湯の2つの湯舟があります。ここではシャンプーやボディーソープを利用することができます。個人的にはここのお湯が一番柔らかく心地よく感じました。
豊沢の湯
旅館部山水閣にある豊沢の湯は、川に向かって開放されている岩づくりの半露天風呂です。奥の岩に腰かけ、目の前に渦巻く川の流れを眺める至福の時間が過ぎていきます。なお、豊沢の湯は浴槽が大きいため、かけ流しと循環を併用しています。
湯治屋の施設
湯治屋館内平面図
平面図の本館2階が玄関で事務所(帳場)で受け付けです。廊下を右に進んだ突き当りが大沢の湯で、廊下の途中には売店やお食事処、自炊場などがあります。一方、左方向に進みますと、畳敷きの休憩室を越えて山水閣と廊下でつながっており、山水閣に入ったところに豊沢の湯があります。薬師の湯は図面中央の新館1階にあります。
客室
歴史が染み込んだ室内です。テーブルと座布団、茶箪笥、冷蔵庫が備え付けられています。扇風機、布団、浴衣は有料での貸し出しです。
自炊場
湯治屋では自炊をする方も多く、大きな炊事場が設けられています。食器や調理器具も豊富に備えてけられていますが、包丁だけは帳場での貸し出しです。ガスは有料で、10円で8分間使用できます。
食堂
湯治屋には食堂もありますので、自炊をせずに過ごすこともできます。割と多くの方々が利用されているようでした。
廊下
古い木造のいい雰囲気の廊下です。窓が大きく光がふんだんに差し込みます。部屋の入口をガラス障子にして、部屋内にも明かりを取り込みます。
共用休憩所
玄関脇の帳場の隣の休憩所です。風呂上がりに売店で買ったビールを飲む方や、雑誌を眺める人も。
その他施設
旅館部山水閣
バス通りから道を下ってくると最初に目に入るのが山水閣です。自炊部湯治屋とは、だいぶ雰囲気の異なる近代的な和風旅館です。ただ、この写真左方向で湯治屋と廊下でつながっていますので、相互に行き来することができます。
大沢温泉の送迎バスは、山水閣前から発着しますので山水閣のロビーにお邪魔しました。とてもきれいで豪華な雰囲気です。
ギャラリー菊水館
かつては宿泊や館内の南部の湯に入ることもできたようですが、現在はギャラリーとしてのみ開放されています。茅葺屋根ですが修復に入っているようです。
まとめ
新幹線の駅から近く、自炊もできる湯治宿を探している中で候補に挙がったのが、大沢温泉「湯治屋」でした。川にせり出した「大沢の湯」に迫る緑豊かな山々、大きな空に浮かぶきれいな雲、火照った体に心地よい風が流れ、とてもいい時間を過ごしました。
気が向けば湯に浸かり、景色を眺めて心を空っぽにする。お腹が空けば簡単な自炊で食事を取り、疲れれば寝床に入ってしまう。滞在中は一日中浴衣で過ごしていました。
古い木造の建物の雰囲気もあって、湯治らしい湯治を体験できたように思います。今度は冬に訪れてみたいと思います。
湯治のために自炊と素泊まりを紹介した記事です。大沢温泉も出てきます。
草津温泉で素泊まり、自炊をした記事です。
別府鉄輪温泉で素泊まり自炊、地獄蒸しをした記事です。