箱根湯本の吉池旅館は、三菱財閥の2代目社長岩崎弥之助が別邸として整備したものを吉池グループの創業者が1937年(昭和12年)に購入したものです。当時の建物と庭園をそのまま残しつつ旅館として整備・運営さており、日帰り入浴と庭園散策が可能ですので今回お邪魔してきました。
三菱2代目、岩崎弥之助
略歴
岩崎弥之助は、三菱の初代社長の岩崎弥太郎の16歳違いの弟です。性格穏やかな秀才で21歳の時にアメリカ留学しますが翌年父親が亡くなったことから、兄の弥太郎を助けるために急遽帰国し三菱商会に入社します。34歳の時に社長弥太郎が亡くなったため社長に就任し、事業の多角化を積極的に推進します。これまで海運業中心であった社業を鉱山開発、造船、不動産、金融、倉庫など次々と事業を興していきました。43歳になると社長を弥太郎の長男(当時29歳)に譲り、自分は相談役として経営を見守ることとしました。その後貴族院議員や日銀総裁などを歴任したのち、57歳で逝去しています。
1851年 | 嘉永4年 | 0歳 | 高知にて出生 兄、弥太郎とは16歳違い |
1872年 | 明治5年 | 21歳 | アメリカに留学 |
1873年 | 明治6年 | 22歳 | 帰国 三菱商会入社 |
1885年 | 明治18年 | 34歳 | 弥太郎逝去 社長就任 多角化を推進 |
1890年 | 明治23年 | 39歳 | 丸の内官有地107,000坪を購入 |
〃 | 〃 | 〃 | 帝国議会創立時に貴族院議員就任 |
1894年 | 明治27年 | 43歳 | 弥太郎の長男久弥社長就任 弥之助相談役 |
〃 | 〃 | 〃 | 丸の内に「三菱1号館」完成 |
1896年 | 明治29年 | 45歳 | 日銀総裁 金本位制の導入 |
1904年 | 明治37年 | 53歳 | 箱根湯本岩崎別邸 和館完成 |
1908年 | 明治41年 | 57歳 | 箱根湯本岩崎別邸 洋館、庭園完成 |
〃 | 〃 | 〃 | 逝去 |
箱根湯本 岩崎別邸
弥之助は箱根には潜在的な魅力があり、開発することは国益にかなうと考えていました。彼は、「箱根は富士の壮麗と芦ノ湖の明媚と多くの霊泉の湧出があるが、惜しむらくは人工の設備を欠いている。これらを完備すれば大いに外国遊覧客を誘致して国益に寄与するであろう」と述べ、その活動拠点として自らも別邸を整備しました。
和館
建設にあたって当時手に入る最高のものを求めましたが、自らが贅沢な生活を営むことが目的ではなく、世界で最高のものを日本に根付かせたいという思いから出たものです。豪華さや派手さはありませんが、日本の美意識の侘び寂びを表現したものとなっています。1904年(明治37年)に竣工し、現在も当時の姿を残しています。
洋館
1908年(明治41年)に、鹿鳴館の設計で有名なジョサイア・コンドルの設計により完成しました。石造りとハーフティンバーを併用した、ドーマー窓を持つ外観です。1階は来客用でホール、食堂、ビリヤード室、客室などがあり、2階は住居で寝室や日本座敷などがありました。関東大震災で倒壊し、現在は芝生広場となっています。
庭園
池を中心に10,000坪の庭園を散策できる園路が整備されています。四季折々の美しさですが、特に春の桜と秋の紅葉は見事です。
池にはたくさんの鯉が泳いでいます。散策路はきれいに整備されています。
池を望むところどころには藤の椅子やベンチが置いてあり、ゆっくりと庭園を鑑賞することができます。
庭園のところどころには、作庭時に設置された石塔や灯篭、つくばいなども置かれてあり和風庭園の趣を際立たせています。
吉池旅館
吉池グループの創業者高橋与平氏が1937年(昭和12年)に三菱の4代目岩崎小弥太氏から旧岩崎別邸を買い受け、1941年(昭和16年)旅館を開業しました。残った和館と当時からの庭園の見事な調和から1998年(平成10年)箱根町第1号の登録文化財に指定されました。
茶室
吉池旅館では、徳川家十六代当主徳川家達の茶室「真光庵」を譲り受け、1987年(昭和62年)に庭園内に移築し保存・継承しています。
源泉
吉池旅館は6本の源泉を持ち、敷地内「山月園」内にも源泉があります。泉温は概ね43℃~80℃で、水素イオン濃度はph8.4のアルカリ泉がメインです。下の写真は「山月園」内の源泉噴出口と、旅館入口看板脇の植え込み内にある源泉噴出口です。
お風呂
内湯
植物園のようなサンルームの大きな内湯です。長さは20mあり、一番奥の壁から滝のように源泉が噴出しています。少々熱めのお湯が噴出していますが、全体に広がることで適温となっています。また、奥の方は深くなっていて、立ち湯で温泉を楽しむことができます。
露天風呂
内湯とは少し離れたところにあるので衣服を着て移動しなくてはなりませんが、野趣あふれる露天風呂があります。庭園の「山月園」を見ながらの入浴ですので気分は最高です。塀などの目隠しはなく、さりげなく散策している人からは見えない距離を確保しています。露天風呂にはロッカーも洗い場もないので、内湯のロッカーを使って身軽に露天風呂に行くのがお薦めです。
まとめ
新宿から箱根湯本まで小田急の特急ロマンスカーだと直通で85分です。そこからわずか徒歩8分で旧岩崎別邸の見事な庭園をゆっくりと散策できて、かつその庭園を観ながら入浴できるとはかなりの贅沢です。入浴料は2,250円と若干高めですが、庭園を散策できることを考えればお得なのではないでしょうか。季節がいい時に一度訪れてみてはいかがでしょう。
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箱根湯本には吉池旅館以外にも日帰り入浴を受け入れている旅館6軒と日帰り温浴施設6軒があります。箱根湯本観光協会HPで紹介されていますのでご興味のある方はご覧ください。
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