東京練馬区の久松湯は、銭湯のイメージからかけ離れているモダンなデザイナーズ銭湯です。コンセプトは自然を感じる雑木林の中の公衆浴場。天然温泉の露天風呂とサウナを備えた本格派です。そんな久松湯をご紹介いたしましょう。
久松湯とは
1956年(昭和31年)初代店主が脱サラして創業したのが始まりです。2013年(平成25年)に温泉掘削を試みて成功し、2014年(平成26年)に建物を建て替えリニューアルオープンしました。
コンセプト
リニューアルオープンに際して、二代目店主は「銭湯らしくしたくない」ということで銭湯専門の設計者ではない方に仕事を依頼しています。建物外観はもとより、湯煙をあしらったデザインの袖壁のサイン、内装は白黒のモノトーンを基調に統一されているなど、設計者のこだわりが随所に見られます。
システム
リターン式のげた箱に靴を入れて鍵をフロントに預けます。入湯料は銭湯ですので東京都統一料金の520円です。サウナは別料金で550円で印の木札を首から下げて利用します。ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、化粧水などは必要に応じて購入できます。レンタルタオルも100円で用意がありました。
外観
外観はまるで美術館か図書館のようです。建物の前の外構には多くの植栽が計画的に配置され、まさに雑木林のイメージです。
建物の前面は一面ガラス張りで明るく開放的です。真ん中の入り口の左側面からはリラクゼーションスペースを見ることができ、右側面からはフロントカウンターと男湯の入り口暖簾が見えます。暖簾の湯煙をイメージしたデザインにも設計者のこだわりを感じます。
内部
ロビー
外に対してはガラスが大きく開放的です。内部は白を基調としたシンプルなデザインで清潔感を感じます。ロビー自体はさほど広くなく、待ち合わせをしたり自販機の利用程度を想定しているようです。
露天風呂
1,500mから掘削した天然温泉は露天風呂に供給されています。含よう素塩化物強塩温泉、高張性でph7.1の中性温泉です。温泉分析書には「無色透明発砲有」「無臭強塩味」とありますので、時間の経過とともに、よう素の影響で黄土色に変色しているのでしょう。塩味はかなり強めでした。湯温は42℃前後に調整されています。源泉温度は41.6℃で、加水はせず加温のみ、循環濾過装置を使用しています。
サウナ
サウナ室は2段で8名程度が入れます。温度は92℃前後で非常に入りやすいサウナでした。水風呂は17℃でこちらも適温です。整いスペースは露天風呂の植栽の縁の石積に腰かけるか、脱衣室前の坪庭のテラスに直接座るか、しかなくデッキチェアなどの備品はありません。外に出れるのはいいのですが、椅子がないのでウトウトするほどの寛ぎは得られません。
内湯
内湯の温度は42℃。部分的にジャグジーや電気風呂の装置が付いています。別浴槽は炭酸泉で湯温は38℃。炭酸吸収には長湯が必要ということで湯温を下げているそうです。
内湯天井は、菱形格天井(ひしがたごうてんじょう)風にデザインされ、ところどころに明り取りのトップライトが造られています。壁面は白で清潔感があるとともに、夜にはプロジェクションマッピングを投影することもあるようです。
洗い場
黒で統一された洗い場からは、坪庭を望むことができます。内湯に居ても外を感じることができる、まさに「雑木林の中の公衆浴場」です。洗い場の椅子、桶もデザインされ黒で統一しています。
脱衣所
脱衣所からも坪庭を見ることができる「雑木林へのこだわり」です。洗面所の天井を見上げると、菱形格天井が内湯から連続しています。ドライヤーの利用は3分20円、小銭を持っていてよかったです。
おまけ(そば処松月庵)
久松湯から最寄りの桜台駅に向かって歩いていく途中に、「そば処松月庵」を見つけました。気さくな店構えと、店内にはお客さんが多くいましたので、ちょっと立ち寄ってみました。
そば、うどん、ご飯もの、お酒のおつまみ、と何でもある地域に愛されているお店のようです。値段もリーズナブルです。
お通しの冷奴のほかに、シラスおろしと肉豆腐を頂きました。肉豆腐はたっぷりの量で、甘めの汁がなんとも美味しかったです。
〆は、カレー南蛮をチョイスしました。肉豆腐でかなりお腹は膨れていましたけど、ペロッと完食です。地元のお客さんはご飯ものも多く注文されていました。カツ丼は見るからに美味しそうでしたので、次回はご飯ものにも挑戦したいと思います。
まとめ
ここまでデザインにこだわり統一感を出しているのはすごいです。露天風呂は天然温泉ですし、サウナと水風呂の温度設定もやさしいので、人気の銭湯であることは納得です。ただ、銭湯専門の設計者でないことからサウナ後の整いスペースの窮屈さや、菱形格天井の組木部分に湯気がたまり、水滴となって滴下するなどの事象が見られました。とはいえ革新的な公衆浴場を目指している久松湯さんには、エールを送りたいと思います。
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